ベクトルを自分に向ける時間がない。
という印象を、月に1回開催しているイベント
「あなたのために映画をえらびます」のときによく受けます。
こどものために。会社のために。友だちのために。
ベクトルは、いつだって外向き。
他者との関係性で生きている限り、
これは避けられない事実だし、とても大事なことだと思います。
でも"その前に"とも思うのです。
まずは自分にベクトルを向けて、心のチューニングをしてみませんか?と。
ここがおざなりになると気持ちも安定しませんし、
相手に迷惑をかける可能性も出てきます。
心を整えておくことがマナー。
それぐらいの気持ちをもって、
積極的にみんなが〈ひとり時間〉を楽しめる空気になったらいいなあ、
ということをよく考えています。
そんなときに背中を押してくれる映画こそが『マダム・イン・ニューヨーク』。
ただ、これを観てしまうと
「自分もがんばろう!!」とやる気が漲ってしまうこと間違いなしなので、
くれぐれもお気をつけください 笑
こんな内容になっています。
***
主人公は、インドのごく普通の主婦シャシ。
二人の子どもと夫のために尽くす彼女の悩みは、家族の中で自分だけ英語ができないこと。
夫や子どもたちにからかわれるたびに、傷ついていた。
姪の結婚式の手伝いで一人NYへ旅立つも、英語ができず打ちひしがれてしまう。
そんな彼女の目に飛び込んできたのは「4週間で英語が話せる」という英会話学校の広告。
仲間とともに英語を学んでいくうちに、夫に頼るだけの主婦から、
ひとりの人間としての自信を取り戻していく…
***
どうです、おもしろそうでしょ?
最初、シャシのベクトルは外向きなんですね。
子どものため、夫のため。
彼女は家族のために尽くすことを、自らの存在意義としていました。
ただ一方で、自分の立ち位置に嫌気もさしている。
でもそこは、良き妻であることを言い訳に、見て見ぬ振りをしていたのです。
でも彼女だって、ひとりの人間です。
自分の心に素直に向き合い、ありったけの勇気を振り絞って"ひとり時間"を作ってみると、
人生はみるみる動き始めました。同時に、ポジティブな連鎖も生まれてきます。
もっとも大きかったのは、ゲイの先生をはじめとしたクラスメートとのつながり。
べビーシッターのメキシコ人、フランス人シェフ、IT企業に勤めるインド人、
美容師のユソンなど、さまざまな人種・職業の人たちとの出会いのおかげで、
彼女はゆっくりと自信を取り戻していくのです。
現状維持は停滞のはじまり。
幸せな気持ちで前に進んでいけば、物事はいつだってうまくいきます。
そのためにもまず。
ベクトルを自分に向けられるような時間を
つくることから始めてみませんか?
************************************************
『マダム・イン・ニューヨーク』
DVD 3,800円(税抜)
発売・販売元:アミューズソフト
©Eros International Ltd.
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
Instagram Web Site