キノ・イグルーの週末シネマ​ no.143
マダム・イン・ニューヨーク|ひとりきりだからできることひとり時間のすすのカバー画像

マダム・イン・ニューヨーク|ひとりきりだからできることひとり時間のすすめ

文:キノ・イグルー 有坂塁

マダム・イン・ニューヨーク|監督・脚本:ガウリ・シンデー(2012年・インド)

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2020年03月13日作成



ベクトルを自分に向ける時間がない。

という印象を、月に1回開催しているイベント

「あなたのために映画をえらびます」のときによく受けます。


こどものために。会社のために。友だちのために。

ベクトルは、いつだって外向き。

他者との関係性で生きている限り、

これは避けられない事実だし、とても大事なことだと思います。


でも"その前に"とも思うのです。

まずは自分にベクトルを向けて、心のチューニングをしてみませんか?と。


ここがおざなりになると気持ちも安定しませんし、

相手に迷惑をかける可能性も出てきます。

心を整えておくことがマナー。

それぐらいの気持ちをもって、

積極的にみんなが〈ひとり時間〉を楽しめる空気になったらいいなあ、

ということをよく考えています。


そんなときに背中を押してくれる映画こそが『マダム・イン・ニューヨーク』。

ただ、これを観てしまうと

「自分もがんばろう!!」とやる気が漲ってしまうこと間違いなしなので、

くれぐれもお気をつけください 笑


こんな内容になっています。


***


主人公は、インドのごく普通の主婦シャシ。

二人の子どもと夫のために尽くす彼女の悩みは、家族の中で自分だけ英語ができないこと。

夫や子どもたちにからかわれるたびに、傷ついていた。

姪の結婚式の手伝いで一人NYへ旅立つも、英語ができず打ちひしがれてしまう。

そんな彼女の目に飛び込んできたのは「4週間で英語が話せる」という英会話学校の広告。

仲間とともに英語を学んでいくうちに、夫に頼るだけの主婦から、

ひとりの人間としての自信を取り戻していく…


***


どうです、おもしろそうでしょ?

最初、シャシのベクトルは外向きなんですね。

子どものため、夫のため。

彼女は家族のために尽くすことを、自らの存在意義としていました。

ただ一方で、自分の立ち位置に嫌気もさしている。

でもそこは、良き妻であることを言い訳に、見て見ぬ振りをしていたのです。


でも彼女だって、ひとりの人間です。

自分の心に素直に向き合い、ありったけの勇気を振り絞って"ひとり時間"を作ってみると、

人生はみるみる動き始めました。同時に、ポジティブな連鎖も生まれてきます。


もっとも大きかったのは、ゲイの先生をはじめとしたクラスメートとのつながり。

べビーシッターのメキシコ人、フランス人シェフ、IT企業に勤めるインド人、

美容師のユソンなど、さまざまな人種・職業の人たちとの出会いのおかげで、

彼女はゆっくりと自信を取り戻していくのです。


現状維持は停滞のはじまり。

幸せな気持ちで前に進んでいけば、物事はいつだってうまくいきます。

そのためにもまず。

ベクトルを自分に向けられるような時間を

つくることから始めてみませんか?


************************************************
『マダム・イン・ニューヨーク』
DVD 3,800円(税抜)
発売・販売元:アミューズソフト
©Eros International Ltd.

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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