大自然に寄り添った映画なら、
『スタンド・バイ・ミー』や『イントゥ・ザ・ワイルド』というロードムービーから、
『ディープ・ブルー』のようなネイチャードキュメンタリーまで数多く存在します。
宮崎アニメだってそうかもしれません。
ただしこれが、大自然に寄り添う"暮らし"の映画となると、
選択肢はぐっと狭まってきます。
自然に根ざした生活をしている主人公って以外と少ないのです。
たとえば。
トルコの手つかずの森林に囲まれた場所に住む、養蜂業を営む家族のお話『蜂蜜』や、
現代のアメリカの森に住み、狩った動物たちを食べ、裸で生活をするというユニークな家族を描いた『はじまりへの旅』(2016) などがそうです。
ただいずれも、ストーリーは暮らしから人間の内面へと
シフトしていく内容となっています。
でも、出来れば"暮らし"そのものに100%フォーカスしたものを紹介したいなあと思い、
今回は『リトル・フォレスト』を選ぶことにしました。
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「小森」は東北のとある村の中の小さな集落。
いち子は一度都会に出たけれど、自分の居場所を見つけることができず、ここに帰ってきた。
近くにスーパーやコンビニもない小森の生活は自給自足に近い暮らし。
稲を育て、畑仕事をし、周りの野山で採った季節の食材から、毎日の食事を作る。
四季折々に様々な恵みを与える一方で、厳しさも見せる東北の大自然。
時に立ち止りながら、自分と向き合う日々の中で、
いち子はおいしいものをもりもり食べて明日へ踏み出す元気を充電していく…
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この説明文だけを読むだけでも、
いかに"暮らし"にフォーカスした作品かはお分かりいただけると思います。
なかでも最大の見どころは、大地のおいしい恵みを活かした食事シーン。
夏は畑で採れたトマトを使ったパスタや麹から作った米サワー、
さらに薪ストーブを使ったパンや岩魚の塩焼き、
秋には山で採ったくるみの炊き込みごはん、合鴨ステーキ、栗の渋皮煮…
と、まあ、とってもお腹のへる一作になっています。
フードディレクションは、野村友里率いる「eatrip」が担当。
どうりでおいしそうなわけだ。
せっかくなので鑑賞する際は、
先ほどピックアップしたメニューのいずれかを再現して、
食事付き上映会にするなんていかがでしょう?
食欲が満たされるのはもちろんですが、
料理の盛り付けなど映画との違いが楽しめますし、
五感で『リトル・フォレスト』を味わうことが出来ます。
映画館で見るよりも、おいしい体験になること間違いなし!
この週末にでも、ぜひ。
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『リトル・フォレスト 夏/秋』
DVD 3,800円+税
Blu-ray 4,700円+税
発売・販売元:松竹
(C)「リトル・フォレスト」製作委員会
※続編となる『リトル・フォレスト 冬/春』も上記同価格にて発売中
※2018年5月時点の情報です
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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