キノ・イグルーの週末シネマ​ no.60
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劔岳 点の記|8/11は山の日山気分を楽しもう

文:キノ・イグルー 有坂塁

劔岳 点の記|監督・撮影:木村大作(2009年・日本)

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2018年08月10日作成



まずは、お詫びを。

今回「山気分を楽しむ」というキナリノらしいお題をいただきながら、

ゴリゴリ硬派な山映画になってしまいました。申し訳ありません。

(正攻法でいけば、沖田修一監督『滝を見にいく』でしょうか)


本連載での"山"テーマはおそらく一回きりだろうし、

それなら山の存在そのものが主人公のような豪快な1本を!

という誘惑に抗うことができず『劔岳 点の記』を選んでしまいました。

でもね、すごくいい映画なんです。


それに、普段自分では選ばない映画から、

異なる感覚を取り入れるのも面白い体験だと思うので、

この出会いを積極的に楽しんでいただけたらと思います。



監督は『八甲田山』(1977) などでおなじみ、

日本を代表するカメラマン、木村大作。

彼が50年の映画人生の全てをかけて取り組んだ、

初の監督作品です。


***


明治40年、日本地図完成のために立山連峰、劔岳への登頂に挑む、

陸軍測量手の柴崎芳太郎ら7人の測量隊。

山の案内人、宇治長次郎や助手の生田信らと頂への登り口を探すが、

生田が足を滑らせけがを負ってしまう。

大自然の厳しさを見せつけられた測量隊だったが、

柴崎と宇治はある言葉を思い出し…


***


"日本地図完成のためだけに、誇りを持って仕事に生きた男たち"

このシンプルな筋立てを、木村大作は徹底したリアリズムにこだわって描きます。

標高3000メートルに達する立山連峰にこもり、

すべてのスタッフ・キャストは40キロ近い機材などを背負い、

撮影現場と山小屋を往復する毎日。

高山病にも悩まされながら、

足掛け2年、延べ200日超かけて撮影されたという、

文字通り執念の一作です。もちろんCGは一切使っていません。


あと、個人的に好きなエピソードがあります。

山の天気が悪くなって撮影が中断したとき、

監督が「祈れ、お前ら!」と香川照之らキャストやスタッフに命じ、

両手を組んで拝ませます。

それでも天気が良くならないことに責任を感じた香川は、

誠意を見せるために20キロの荷物を背負って、

「もう僕たち、いけるんでお願いします!」と空に向かって叫んだのだそう。

でもクールな松田龍平だけは参加せず、

ひとりしっかりと休息を取っていたのだとか 笑

さすが、優作の息子です。


そんな極限状態に置かれた人間と、

大自然の脅威をフィルムに焼き付けてくれただけで、

観てみよう!という気持ちになりませんか?

でも結果的に、山へ行く気がなくなってしまったら、すみません。

そこの責任はとれませんが、でもやっぱり観てほしいなあ。


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『劔岳 点の記』
メモリアル・エディションDVD 2,856円+税
レジェンド・ボックスDVD 6,500円+税
Blu-ray 5,700円+税
発売元:フジテレビジョン
販売元:ポニーキャニオン
(C)2009「劔岳 点の記」製作委員会

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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