最初に告白しておくと、
今回の『チャイナタウン』は、キナリノのイメージから、
だいぶかけ離れた作品になります。素敵さも、ワクワクも、
やさしささえもありません。なんなら、ちょっとシリアスですらある。
同じ探偵ものなら、『シャーロック・ホームズ』や
『探偵はBARにいる』というエンタメ系もあったのですが、
今回は、硬派なハードボイルドにチャレンジしてみたいと思ったのです。
人は、映画を観るとき、自分好みの作品を選びます。
そして2時間使うなら、時間を無駄にしたくないという心理が働きます。
『かもめ食堂』が好きなら『ホノカアボーイ』が観たくなる。
ただ。
そればかり続けていると、どこかで飽きてしまう可能性があるんです。
世界が広がらないから。
"安心"もいいけれど、同じぐらい"刺激"も大事だと思います。
その振り幅があると、映画により夢中になれるし、心のバランスさえもとれる。
というわけで今回は、お題に対して、
最もエッジの効いた1本をオススメしてみることにしました。
重厚なハードボイルド映画、『チャイナタウン』です。
こんなストーリー。
***
ロサンゼルスの私立探偵ギテスは、ミセス・モーレイなる女性から、
夫ホリスの浮気調査を依頼された。
ギテスはダム建設技師であるホリスの身辺を調査し、愛人らしき若い女性の存在を知る。
だが、ギテスが押さえた証拠写真はゴシップ紙にすっぱ抜かれ、
次いでホリスの妻イブリンを名乗る女性がギテスを訴えると乗り込んできた。
彼女は最初の依頼人とは別人であった。さらに数日後、ホリスが溺死体で発見される。
こうしてギテスは、事件の裏にある大きな陰謀と、
愛憎入り乱れる人間関係に巻き込まれていく…
***
主役は、若きジャック・ニコルソン。
名探偵と言えば、粋なダンディズムが当たり前の中、
イヤらしいキャラクターすれすれに私立探偵を演じ、
アカデミー主演男優賞にもノミネート。
これまでにない探偵像を確立しました。
そして本作が傑作と呼ばれる大きなポイントに、
先の展開がまったく読めないオリジナル脚本があります。
全米脚本家組合が2006年に選んだ歴代の映画脚本で、
第3位に選出したほど、プロからも評価の高い一作、
お手本のような一作なのです。
(1位は『カサブランカ』、2位は『ゴッドファーザー』)
もし本作を鑑賞してみて、それでも良さがわからなかった方は、
ぜひネットでいろいろな人の感想を読んでみてください。
ぼくもパンフレットや映画本などを読んで初めて、
理解することができた映画ってたくさんあります。
自分の考えに固執せず、柔軟に受け入れていければ、
映画を観るたびに、世界が広がっていくのです。
と、くどくど説明してしまいましたが、
ご興味がありましたら、この週末にでも観てみてください。
監督は、カンヌのパルムドールにも輝いた美しい感動作
『戦場のピアニスト』(2002) のロマン・ポランスキーです。
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『チャイナタウン』
Blu-ray 2,381円+税
製作25周年記念版 DVD 1,429円+税
発売中
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2018年1月の情報です。
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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