キノ・イグルーの週末シネマ​ no.104
ハッピーアワー|心が浄化されるよう夜明けが印象的な映のカバー画像

ハッピーアワー|心が浄化されるよう夜明けが印象的な映画

文:キノ・イグルー 有坂塁

ハッピーアワー|監督:濱口竜介(2015年・日本)

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2019年06月14日作成



担当編集のKさん、ナイステーマです!

じつは今回のお題に対して、

ぼくはすでに揺るぎないひとつの答えを持っています。

それは、世界でもっとも美しい夜明け(朝焼け)を撮れる人は、

日本人の濱口竜介監督をおいて他にはないと。


ぼくは、この1978年生まれの才能に惚れ込んでおります。

2012年公開の『親密さ』はその年の日本映画でダントツのベスト1に選出。

今回紹介する『ハッピーアワー』も

2015年のぶっちぎりベスト1に選出するほどに大好きな作品です。


ともにインド映画もびっくりな長尺の作品で、

『親密さ』は4時間15分、

『ハッピーアワー』においては5時間17分もあるのですが、

ともに、映画の終盤には「終わらないでくれ!」と

願ってしまうほどに面白いのでご安心を。

そしてどちらの作品にも、

永遠に語り継がれていくであろうレベルの

"美しい夜明け"が映像化されています。

これはぜひとも、観てもらいたい!ということで、

めでたくBlu-ray化された『ハッピーアワー』を今回はご紹介しますね。

こんなお話です。


***


30代後半に突入した、あかり、桜子、芙美、純。

仲が良くどんなことでも屈託なく話せると考えていた彼女たちだが、

純が1年にわたって離婚協議をしていたことを知る。

離婚裁判に臨むものの、さまざまな理由から勝ち目のない純。

それでも諦めようとしない彼女の姿を目の当たりにした3人は、

自分たちの生き方を再考する。

そんな中、気晴らしになればと4人で有馬温泉へ旅行する。

楽しいひとときを過ごす一方、純はある決意を胸に秘めていた。


***


という内容なのですが「これがベスト1?」ってなりますよね?

うんうん、わかります 笑


でも映画の面白さというのは、

何を語るかではなく"どう語るか"です。


もし同じ物語を別の人が監督したら、まったく別の作品が出来上がる。

ロケーション、キャスティング、カメラポジションなど、

さまざまな選択が異なり、上映時間だって2時間で収めてしまうかもしれない。

だから、濱口監督の語り方に注目してみてください。


彼は、一見メロドラマのような設定を、

自分の意思を持って、5時間17分の超大作に仕上げました。

言葉での説明は難しいですが、堂々とした"映画作品"になっています。


その中にあって、やはり心を掴んで離さないのが、

神秘的とも言える夜明けのシーンです。


人生の分岐点に差し掛かったひとりの女性が、延々とひとりで歩く姿を、

カメラは寄り添うようにワンカットで収めていきます。

そして、少しずつ、ほんの少しずつ、夜が明けていくのです。

ぼくらが普段見ているように、ゆっくりと。

このときの朝焼けのグラデーションは、本当に感動的です。

同じ景色は、二度とありません。


「夜は昼と違い太陽の光がないので、自分の輪郭がおぼつかなくなる。

そんな時間を潜り抜けて新しい自分になる」

と演出意図を語る濱口監督。素敵じゃないですか?


映画で5時間と考えると気が遠くなりますが、

人生の中の5時間と考えれば、そう大した問題ではないはず。

ぜひとも、この週末にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

テンポもいいので、思ったより観やすいですよ。


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『ハッピーアワー』
Blu-ray 6,800円+税
発売・販売元:株式会社NEOPA
©2015 KWCP

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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