繰り返し鑑賞するほどにのめり込んだ、最初の映画かもしれません。
1995年公開の『ユージュアル・サスペクツ』。
ぼくが観たのは、映画に目覚めたばかりの20歳のときでした。
俳優、監督の名前は存じ上げなかったものの、
チラシのビジュアルに妙に心惹かれまして。
警察の面通しに呼ばれた男5人の横並び画像に、
「見破りますか?だまされますか?」というキャッチコピー。
挑戦状を思わせるこのビジュアルに胸が高鳴り、
「よし!初日に行ったろ」と心に決めたことを今でも覚えています。
1996年4月13日(土)
場所は、銀座テアトルシネマ。
ビルの5Fにある劇場までエレベーターで上がると、
そこにはオープンを待つ人の長蛇の列が!
それは階段の下まで伸びていて、
結局2Fぐらいまで降りる羽目になったのですが、
「それほどの映画なのか!」と期待は高まるばかりでした。
150席ある劇場は、当然ながら満席です。
おまけに、今では考えられませんが、通路に座る人が出るほどの大盛況。
そんな異様な空気の中、
いよいよ上映開始のブザーが鳴ったのです。
***
カリフォルニアのある港に停泊していたマフィア所有の貨物船が大爆発し、
27人が死亡する事故が起きる。
同時に、現場にあった大量のコカインと9100万ドルが消えたことが判明。
麻薬を奪おうとした犯罪一味とマフィアとの争いが原因で起きた事件らしいということになり、
さっそく関税特別捜査員のクイヤンが捜査に乗り出す。
そして彼は、唯一無傷で生き残った男ヴァーバルへの尋問を開始した。
ヴァーバルの話は6週間前にさかのぼる―。
ある事件の容疑者として警察署に連行された彼ら常連犯罪者たち5人は、
そこで出会ったことをきっかけに意気投合し、
釈放後、宝石強盗を実行する。
強奪は見事成功するが、その後さまざまな悶着が発生。
そして事態を裏で操っているのは、
誰も顔を知らない伝説のギャング、カイザー・ソゼだということだったが…
***
この映画は、絶対にネタバレ禁止です。
間違っても、事前にレビューを読んだり、予告編を観たり、
人から感想を聞いてはいけません。
なんなら、出演者名もノーチェックでお願いします。
情報を入れずに、真っさらで。
その状況さえ作れれば、
映画史に残るとまで言われる驚愕のラストシーンに
打ちのめされること間違いなしなので、ぜひ。
よって、これ以上の紹介もとても難しいのですが…笑
気を取り直して……見どころは大きく言うと2つあります。
まずは、クセがスゴい俳優たち。
もちろん名前は申し上げられませんが、5人の容疑者と捜査官、
それぞれがそれぞれに魅力的で、
その静かな演技合戦は観るものを熱い気持ちにさせてくれます。
さらにトム・クルーズのような大スターではなく、
シブめのバイプレイヤーを揃えたことで、物語に深みが生まれ、
犯人の目星まで付きにくくなるという効果も生んでいます。
何と知的なキャスティング。
そういった意味では、同時代の傑作『レザボア・ドッグス』にも
通ずるものがあるのかもしれません。
2つ目は、脚本です。
巧妙に練られたストーリー展開と、ラスト数分の疾走感。
そして、騙される快感にあふれた衝撃のラスト。
第68回アカデミー賞で脚本賞を受賞し、
2006年には全米脚本家組合による「最高の映画脚本101」に名を連ねたほど、
歴史に残る名シナリオとなっています。
二度三度と観ていくと、
犯人の手がかりになるような小ネタが仕掛けてあったり、
脚本の仕組みから謎解きのヒントが見えてきたりと、
とても考察しがいのある作品となっています。
サスペンスが苦手な人にも強くオススメしたい!
そんな傑作サスペンス。
ステイホームな連休中に、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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『ユージュアル・サスペクツ』
Blu-ray 2,074円(税込)
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2021年4月の情報です。
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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