キノ・イグルーの週末シネマ​ no.22
好きだ、|同窓会のお知らせ懐かしい青春の物のカバー画像

好きだ、|同窓会のお知らせ懐かしい青春の物語

文:キノ・イグルー 有坂塁

好きだ、|監督:石川寛(2006年・日本)

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2017年11月17日作成



川辺の風景。

放課後の時間。

異性へのドキドキ。


"あの頃"にぼくらが感じていた、

言葉にならないさまざまな感覚・感情を、

ギュッと真空パックにして詰め込んだ作品が

今日ご紹介する『好きだ、』です。


***


ユウとヨースケは同じ高校に通う17歳。

元野球部のヨースケは、

いつも放課後になると川辺でギターを弾いている。

将来は音楽で食べていきたいと思うが、

まだまだ下手で同じところばかり弾いている。

ユウはその横でギターを聴いているうちに

いつのまにかユウも曲を覚えてしまった。

ユウには姉がいる。

半年前に大切な人を亡くした姉をユウも、

そしてヨースケも心配していた。

覚えたメモリディーをユウは家でも鼻歌で歌っていた。

そのうちに姉も覚えてしまった。

ある日、ヨースケがユウの姉を川辺に誘った。

姉が川辺に向かう途中事故にあってしまう。

それをきっかけにユウとヨースケも会わなくなる。

17年後、偶然二人は再会し…


***


セリフが極端に少ない本作は、

たくさんの余白と行間に、

真の思いがぎっしり詰まっています。


そして、その思いを包み込むように、

川のせせらぎ、風の音、

虫の声など生きた音の数々が静かに聴こえてきます。


それはぼくたちがかつて感じたことのある何かであり

過ごしてきた時間でもあります。

そんな遠い記憶をゆっくりと呼び覚ましてくれる作品が、

この『好きだ、』なのです。



監督は、資生堂「マシェリ」のCMや、

映画『ペタル ダンス』を手がけた石川寛さん。


この息づかいや心臓の鼓動まで聞こえてきそうな

"語らない美しさ"というのは、

ある意味、彼の作家性と言えるかもしれません。


ぜひ本作をとおして、

"あの頃"の感覚を蘇らせて、

長年、連絡をとっていなかった、

あの人に会ってみるなんていかがでしょうか?


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『好きだ、』
発売元:カルチュア・パブリッシャーズ
(c)「好きだ、」製作委員会

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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