キノ・イグルーの週末シネマ​ no.39
ベニスに死す|もう一つの映画大国名作イタリア映のカバー画像

ベニスに死す|もう一つの映画大国名作イタリア映画

文:キノ・イグルー 有坂塁

ベニスに死す|監督:ルキノ・ヴィスコンティ(1971年・イタリア/フランス)

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2018年03月16日作成


かつてイタリアは、映画大国として知られていました。

映画草創期から、3つの映画会社が存在し、

1930年代になると、巨大な撮影所「チネチッタ」が建設されます。

ここでは、良質なイタリア映画が生まれただけでなく、『ベン・ハー』(1959)など、

大作のアメリカ映画も撮影され、

イタリアは映画大国として世界に知れ渡る存在となっていました。


そこから生まれた偉大なマエストロが、

フェデリコ・フェリーニであり、ミケランジェロ・アントニオーニであり、

今回紹介するルキノ・ヴィスコンティなのです。


彼は、なんと、イタリアでも屈指の名門貴族出身。

その出自を生かし、没落していく貴族や芸術家を描き込めば、彼の右に出る者はいません。

そんな人の作る作品、観てみたくありませんか?


なかでも『ベニスに死す』は、

彼自身が「この作品は私の生涯の夢だった」と語るほど、思い入れの強い1本。

人の美と醜さの両面を見つめた、美しい作品です。


***


1911年、イタリアのベニス。

静養に訪れたドイツの高名な老作曲家のアシェンバッハは、

宿泊先のホテルで見掛けた少年タジオに一目で心を奪われる。

タジオへの思いが抑えられず後を付け回すようになるアシェンバッハだったが、

折しもベニスでは、コレラが蔓延し始めていたのです…


***


この内容をヴィスコンティは、

絵画のような魅惑的な映像と、マーラーの官能的な楽曲、

絶世の美少年ビョルン・アンドルセンを使って、

唯一無二の世界へと観る者を誘います。


苦悩と歓喜、恍惚と絶望。

やがて訪れる、映画史上最も甘美で残酷なラストシーン。

年齢を重ねるほど、せつなさが増すんだよなあ。

圧倒的な輝きと風格に満ちた、ヴィスコンティの神髄をとくとご覧あれ。


他の名作も観たい方は、ぜひフェリーニの『道』を。

アントニオーニの『欲望』も観ると、イタリア映画界の奥深さが実感できるはず。

そしていつの日か、マーティン・スコセッシが監督した

イタリア映画史をナビゲートしたドキュメンタリー『私のイタリア映画旅行』にも

チャレンジしてみてくださいね。


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『ベニスに死す』
DVD 1,429円+税
発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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