もしかしたら。
この作品を観たあなたは、いてもたってもいられず、
今すぐ、ウィーンへ旅立ってしまうのかもしれません。
『ビフォア・サンライズ』という作品は、
それほどまでに、観ている人の旅心を目覚めさせてくれる、
特別な力をもった1本なのです。
「セリーヌはソルボンヌ大学で文学を専攻するパリジェンヌ。
祖母の見舞いの帰り、ブダペストからパリに向かうユーロトレインの中で若いアメリカ人の新聞記者ジェシーに出会う。
列車のレストランでふたりは、自分のこと、仕事のこと、
幼い日の思い出のことなど、果てしない会話が続いた。
ジェシーの降りるウィーンの駅に着いても、2人の会話はまだ終わらなかった。別れたくない。もっと話していたい。
そんな気持ちをジェシーは素直に言う。
"明日の朝まで14時間。一緒にウィーンの街を歩かないか?"」
こんなロマンティックな物語、あるでしょうか。
でも、このふわふわしたエアポケットのような時間が、
のちにふたりの人生に大きな影響を及ぼすことになるのです。
そして途中下車したウィーンの風景は、何から何までもがキラキラと輝いています。
教会近くの小さなカフェや街中を走るトラム、公園の大観覧車、
レコード店、水上レストラン、レトロなバー。
リチャード・リンクレイターが、ウィーンに惚れ込んでいるその気持ちが、その喜びが、その愛情が観ているこちらにも伝わってきます。
そしてこの美しい物語は、ウィーンの夜明けでは終わらず、夕暮れのパリ、ギリシャの美しい港町へと、さらに続いていくのです。
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『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離 <ディスタンス>』
DVD 1,429円+税
販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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