昭和のはじめ、三種の神器と言われた、
"テレビ、冷蔵庫、洗濯機"
中でも"テレビ"は、長らく娯楽の王様だった映画界へ大打撃を与え、
エンターテイメントの勢力図を一気に塗り替えてしまいました。
『お早よう』は、そんな時代のお話。
(『Always 三丁目の夕日』で言うところの、鈴木オートにテレビがやってきた!あたりの)
舞台は、昭和30年代前半の東京郊外、
大きな川の土手沿いに並んで建っている平屋の文化住宅。
ここに住むわんぱく盛りな兄弟は、
テレビが欲しいと両親にねだりながらも聞き入れてもらえず、
そこで彼らは「誰とも口をきかないストライキ」という大作戦に打って出ます。
このストライキをめぐるあれこれが、
いちいち面白くて、とにかく笑えます。
勇気を振り絞って父親に文句を言えば
「余計なことを喋るんじゃない 」と一喝され、
しかし負けじと「大人だってつまらないことばかりいっているじゃないか、
お早よう、こんにちは、良いお天気で、さようなら…」
なんて、ドキッとするようなことを、
わんぱく坊主たちは言ったりするのです。
こんな大人とこどもの価値観のすれ違いを、
エンターテイメントの枠の中で、知的な笑いに昇華できる小津安二郎は、
やはりただ者ではありません。
ちなみに本作は、日本芸術院賞を受賞したあと、
「芸術院賞を貰ったからマジメな映画を作ったといわれるのもシャクだから… 」
と気楽に笑える作品として作られたのだそう。
ご近所づきあい、言葉遣い、土手、家並み、フラフープなど、
昭和ノスタルジーを感じる場面もいっぱいで、つくづく「日本人でよかったなあ」と感じられる楽しい一作です。
あなたもぜひ。
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発売・販売元:松竹
©1959 松竹株式会社
※2017年8月時点の情報です
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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