キノ・イグルーの週末シネマ​ no.135
北極のナヌー|凍てつく世界が愛おしく見える北極の動物たのカバー画像

北極のナヌー|凍てつく世界が愛おしく見える北極の動物たち

文:キノ・イグルー 有坂塁

北極のナヌー|監督・撮影:アダム・ラヴェッチ、サラ・ロバートソン(2007年・アメリカ)

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2020年01月17日作成



気がつけば『ブレードランナー』的な世界を生きる2020年のぼくたち。


都心の駅は、紙ポスターからデジタルサイネージへ。

"1秒が勝負"と言われたポスターに比べ、やはり動画の方が圧倒的に目に留まりやすい&エコ。

変わるべくして変わったのだろうと思いますが、その分ストレスが大きくなったこともまた事実。

だって、日々、暴力的に映像が飛び込んでくるのですから。


しかしそのストレスを動画で癒せてしまうのも、この時代のおもしろいところ。

その動画とは、何かお分かりですよね? そう、"動物"動画です。

ぼく自身も、YouTube、Instagram、Pinterestで毎日何度もチェックし、

お気に入りは友人とシェア。

「これ、かわいくない?」という"幸せのおすそ分け"が、

周囲との関係をよりポジティブなものにもしてくれているのです。


最近のマイブームは、びっくりするパンダ、仔猫をくわえる親猫、犬の遠吠え。

そんな自分好みの"かわいい"ばかりを永遠に楽しむことができるのだから幸せな時代です。

一方、同じ動画でも、映画だともう少し踏み込んで、

動物の本質的な部分などを知ることができる。

近年、心を揺さぶられたのは、何と言っても『北極のナヌー』。

こちらは、世界最高峰のネイチャードキュメンタリーチーム、ナショナルジオグラフィックが

10年もの歳月を費やして製作したドキュメンタリードラマになります。

内容は、こんな感じ。


***


海に浮かぶ氷の世界、北極。

北極海の海氷面積は過去30年の平均より168万k㎡(日本国土の4倍半)も減少。

いまだかつて経験したことのない暖かい北極で誕生した白くまのナヌーが、

6ヶ月間暮らした穴を離れ、母ぐまと旅立つ場面から始まる。

溶けてゆく氷の上での難しい狩りを経験し、時速100キロものブリザードの中、

飢えをしのぎながら移動する…


***


刻々と深刻さを増す北極の現実を"ナショジオ"らしい圧巻の映像美で観せてくれます。

厳しい自然を生き抜く白くまと動物たち。

彼らにとって命の大地でもある北極の氷は、地球温暖化により、失われようとしています。

本作は、漠然としたイメージしか描けなかった温暖化の現実を、

そこに生きる生命の物語として教えてくれます。


身勝手な人間のせいで、このまま行くと2040年には北極の氷が消滅してしまうのだそう。

自分さえ良ければいい、という考えの裏で奪われている動物たちの命。

正直、胸の痛いシーンも出てきますが、

地球規模で考えなければいけないことを、本作は勇気を持って語りかけてくれます。

動物のことを心から想っていれば、映像を観るぐらい何のことはありません。

地球という大きな"家"に暮らす友人のために、

ひとりでも多くの方が『北極のナヌー』を鑑賞してくれますように。


そして。

世界中の動物たちが安心して暮らせる世の中になることを、強く願って。


************************************************
『北極のナヌー プレミアム・エディション』
DVD 3,800円+税
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
販売元:コムストック・グループ
© 2007 COTN Productions, Inc.

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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