昨年末にも＂ファッション＂をテーマに一度書いたのですが、

みなさん覚えているでしょうか？


2020年12月18日、作品は『エデンより彼方に』で、

「名デザイナーの衣裳デザイン」というテーマの回でした。


このときにフォーカスしたのは、映画を中心として活躍する＂衣裳デザイナー＂。

彼女たちの仕事は、メインキャストから始まり、

端役やエキストラなど画面の隅に小さく映るような役柄まで、

トータルの衣装を統括する業務内容となっています。


そのときは紹介しませんでしたが、

ティム・バートンと長年組んでいる衣装デザイナーのコリーン・アトウッドは

『ダンボ』のとき、女性エキストラだけでも400～500の衣装を作ったのだそう。

もちろん、彼女をトップとしたチームでの制作にはなりますが、

そのスケールの大きさにはただただ驚くばかりです。


一方、今回は！


伝説とも言える著名なデザイナーが、

＂ある1人のため＂に衣裳デザインを担当したという、

贅の極みのような作品をご紹介したいと思います。


フランスの大女優カトリーヌ・ドヌーヴとイヴ・サンローランが、

初コラボレーションをして話題となった作品『昼顔』。

（上戸彩と斎藤工の『昼顔』は、本作へのオマージュとして作られました）


内容は、こんな感じとなっています。


＊＊＊


セヴリーヌは外科医のピエールを夫に持ち、

表面的には幸福な毎日を過ごしている専業主婦だった。

だが、いつしかみだらな妄想を抱くようになり、

ある日友人から、上流階級の婦人たちが客を取る売春宿の話を聞いたセヴリーヌは、

ついに昼間だけ、そこで売春婦として働きだすように。

＂昼顔＂というあだ名で呼ばれるようになったセヴリーヌだが、

得意客になったチンピラ、マルセルに結婚を迫られて…


＊＊＊


じつは意外と、スキャンダラスな内容となっています。

当時の女性にはタブーとされていた

あらゆるルールをセヴリーヌは破っていくのですが、

それは、従順な妻の役割だけでは満足できない、

当時の女性心理の反映でもあるわけです。


事実、1960年代のフランスでは、

女性解放運動の真っ只中だったこともあり、

女性の深層心理を鋭く描いた『昼顔』は高く評価され、

ベネチア国際映画祭では金獅子賞を受賞しました。


そして、サンローランです。


彼にとっても60年代は格別な時代で、

モンドリアンの抽象画をAラインドレスに取り込んだ「モンドリアン・ルック」(1965) や、

「スモーキング」(1966)、「サファリ・ルック」(1968) など、

のちに代表作と語られるスタイルは、すべてこの時期に生まれています。


さらに1966年には、初のプレタポルテ（既製服）のブティック

「イヴ・サンローラン リヴ・ゴーシュ」をオープンし、

まさにノリにノッている時代のコラボレーションだったわけです。


昼は高級娼婦、夜は貞淑なブルジョワ妻。

そんなイマジネーションを掻き立てられるドヌーヴのキャラクターを、

サンローランは美しい衣裳の数々で表現します。


赤のアイゼンハワー・ジャケット。レザートレンチコート。

グレーのミリタリーコート。ブラックのファーコート。

サファリ・ジャケット。ブラック・ドレス。

そして、それらに合わせるロジェ・ヴィヴィエのパンプス……


他にも、バッグや帽子、サングラスなど

小物使いのセンスも本当に素晴らしいので、

ぜひ、2回以上の鑑賞を強くオススメします。

このステキさは、一回では追いきれません！


そんなドヌーヴとサンローランが、初めて出会ったのは1965年。

ロンドンで女王陛下に謁見するときのドレスを、

サンローランにオーダーしたのが始まりと言われています。

このときのドレスもネットで見ることができますので、

ぜひ探してみてくださいね！


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発売・販売元：KADOKAWA