キノ・イグルーの週末シネマ​ no.191
ハイ・フィデリティ|わたしの心を満たすとっておきのコレクショのカバー画像

ハイ・フィデリティ|わたしの心を満たすとっておきのコレクション

文:キノ・イグルー 有坂塁

ハイ・フィデリティ|監督:スティーブン・フリアーズ(2000年・アメリカ)

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2021年02月12日作成



みなさんは、何かコレクションってされているでしょうか?

ヴィンテージ食器とか、レアな文具とか。


ぼくは比較的、収集癖はある方で、

本やDVDなどを集めてもいますが、コレクションとなると、

やっぱり映画パンフレットということになるでしょうか。


映画好きになって26年。劇場で観た際は必ず購入。

ぜんぶで何冊あるのか数えたこともありませんが、

単純計算でも5000冊は軽く超えているのではないかな、と。


一時期は、レコードコレクターのように"レア版"にまで手をつけ、

最高額は『レザボア・ドッグス』で、なんと8000円。

タランティーノのブレイク前だったことに加え、

渋谷シネマライズの限定公開だったことも重なり、

ウソみたいな高値がついていました。


デザイナーの信藤三雄さんが手がけた『ナック』や、

川勝正幸さんが編集した『うたかたの日々』など、

渋谷系の流れを汲んだおしゃれなレア版パンフにも手を出してたのだから、

もはや完全にコレクターですね(笑)


さて。

そんな自分と同じ、前のめりな情熱を感じるコレクターが

登場する作品こそが『ハイ・フィデリティ』です。

このレコードショップ「チャンピオンシップ・ヴァイナル」のスタッフたちは、

愛の対象が違うだけで、エネルギーはぼくとまったく同じ!

と言っても、社会的にはダメダメな人たちなので、

「同じ!」なんて声を大にして言うのも何だか違う気がするのですが…


さておき。

ストーリーはこんな感じとなっています。


***


シカゴで中古レコードショップ「チャンピオンシップ・ヴァイナル」を経営するロブは、

アルバイトの音楽ジャンキー2人と音楽談義に花を咲かせる毎日。

音楽に関しては人並み以上の愛情を自負する彼だが、

こと恋愛に関しては失敗ばかり。

最近も恋人ローラにフラれたばかりだ。強がってみても、

日増しに強まっていく彼女への想い。

そこで彼は"これまで辛かった失恋体験トップ5"をリストアップ、

自分を捨てた女性たちを訪ね、

自分の何がいけなかったのかを問いただそうとする。


***


どうです? 最低ですよね 笑

この一文だけでも、ロブのこじらせ具合が目に浮かぶと思います。


しかし一方で、そんな彼に共感してしまうところもたくさんあるんですよねー。


とくに、物事を何でも"ベスト5"で考えようとする思考回路。

これには思わず拍手!です。


いつの時代だって、映画・音楽ラヴァーはベスト企画好き、

と相場が決まってますし、

この設定にしただけでロブというキャラクターも一発で理解できますから

(そしてあなたも、うっかり、ベスト5を考えてしまうはず)


彼は、ローカル雑誌の取材を受けたとき、

「あなたにとってのトップ5の曲は?」と聞かれ、

ああでもないこうでもないと作品を入れ替え続け、

一向に決めることが出来ません。


それはつまり、どの曲を選ぶかで、

音楽的な知識やセンスはもちろんのこと、性格や価値観など、

すべてがジャッジされてしまうという強迫観念があるからなんです。

めんどくさいにもほどがある…


でもそんなロブだからこそ、

「チャンピオンシップ・ヴァイナル」という

個性的なレコードショップが経営できてるわけで。


彼はミックステープを作るときの気持ちを、こう語ります。

「テープを作るということは、手紙を書くのと似ている——

何度も消したり、考え直したり、最初からやり直したり。

良いコンピレーションテープを作るのは、

別れ話をするのと同様、難しいものなんだ」と。


ひとつの世界を極めた人にしか感じられない、純度100%なロマンティック。

"わたしの心を満たすコレクション"があるということは、

もしかしたら、周囲の人まで幸せに巻き込める

ひとつの"才能"なのかもしれません。

『ハイ・フィデリティ』を観ていると、そうとしか思えないのです。



※2020年には、レニー・クラヴィッツの娘ゾーイ・クラヴィッツを主演に、

Huluでテレビシリーズ化もされています。


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『ハイ・フィデリティ 特別版』
DVD 1,429円+税
DVD発売中/デジタル配信中
© 2021 Touchstone Pictures.
発売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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