キノ・イグルーの週末シネマ​ no.64
月曜日のユカ|心奪われる麗しき昭和のヒロイのカバー画像

月曜日のユカ|心奪われる麗しき昭和のヒロイン

文:キノ・イグルー 有坂塁

月曜日のユカ|監督:中平 康(1964年・日本)

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2018年09月07日作成



アメリカはオードリー・ヘプバーン『ローマの休日』、

フランスならアンナ・カリーナ『女は女である』、

イタリアだとカトリーヌ・スパークの『太陽の下の18歳』。


無名女優が一夜にしてスターの階段を駆け上がる、

そんな夢のようなシンデレラ・ストーリーはどの国にも存在します。



では日本で言うなら、どの作品の、誰か。

あややこと若尾文子の『祇園囃子』も捨てがたいですが、

やはり『月曜日のユカ』には到底かないません。


この加賀まりこは、本当にすごい。神がかってます。

そのあふれんばかりの美しさとカッコよさを、

94分かけて、たっぷり見せてくれます。


これは、さまざまな伝説に包まれながら奔放に生きる女性の姿を描いた、

1964年の名作です。


***


横浜の外国人客が多い上流ナイトクラブ「サンフランシスコ」では、

今日もユカと呼ばれる十八歳の女の子が人気を集めていた。

さまざまな伝説を身のまわりに撒きちらす女、

平気で男と寝て、教会にもかよう。

彼女にとっては当り前の生活も、人からみれば異様にうつった…


***


という、若さゆえの刹那的なストーリー。

その難しい物語の主人公を、加賀まりこは事もなげに、軽やかに演じます。

純粋で無垢で不安定。自由奔放だけどチャーミング。

まさに小悪魔という言葉がぴったり。


そんな彼女のコケティッシュな魅力を、

モダニストと称される中平康監督は、

一風変わった映像で表現していきます。

大胆な構図やコミカルな早回し、ドキッとするストップモーション。

これらが入ることで、ユカ特有の"ズレ"みたいなものが、

何倍にもなって伝わってくる。


彼女自身の持っている魅力と、遊び心のある映像がブレンドされたことで、

ユカは映画史に残る、永遠のヒロインとなったわけです。


せっかくなので、本作から2年後に出演した『とべない沈黙』(1966) も

オススメしておきます。

こちら、作品自体は前衛的で難解なのですが、

幻の蝶に扮した加賀まりこのクールな美しさがとにかく秀逸なので、

ぜひ観てもらいたいです。目の保養になること間違いなし。


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『月曜日のユカ』
DVD 1,800円(税別)
発売中
発売元:日活
販売元:ハピネット
(C)1964日活

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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