アメリカはオードリー・ヘプバーン『ローマの休日』、
フランスならアンナ・カリーナ『女は女である』、
イタリアだとカトリーヌ・スパークの『太陽の下の18歳』。
無名女優が一夜にしてスターの階段を駆け上がる、
そんな夢のようなシンデレラ・ストーリーはどの国にも存在します。
では日本で言うなら、どの作品の、誰か。
あややこと若尾文子の『祇園囃子』も捨てがたいですが、
やはり『月曜日のユカ』には到底かないません。
この加賀まりこは、本当にすごい。神がかってます。
そのあふれんばかりの美しさとカッコよさを、
94分かけて、たっぷり見せてくれます。
これは、さまざまな伝説に包まれながら奔放に生きる女性の姿を描いた、
1964年の名作です。
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横浜の外国人客が多い上流ナイトクラブ「サンフランシスコ」では、
今日もユカと呼ばれる十八歳の女の子が人気を集めていた。
さまざまな伝説を身のまわりに撒きちらす女、
平気で男と寝て、教会にもかよう。
彼女にとっては当り前の生活も、人からみれば異様にうつった…
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という、若さゆえの刹那的なストーリー。
その難しい物語の主人公を、加賀まりこは事もなげに、軽やかに演じます。
純粋で無垢で不安定。自由奔放だけどチャーミング。
まさに小悪魔という言葉がぴったり。
そんな彼女のコケティッシュな魅力を、
モダニストと称される中平康監督は、
一風変わった映像で表現していきます。
大胆な構図やコミカルな早回し、ドキッとするストップモーション。
これらが入ることで、ユカ特有の"ズレ"みたいなものが、
何倍にもなって伝わってくる。
彼女自身の持っている魅力と、遊び心のある映像がブレンドされたことで、
ユカは映画史に残る、永遠のヒロインとなったわけです。
せっかくなので、本作から2年後に出演した『とべない沈黙』(1966) も
オススメしておきます。
こちら、作品自体は前衛的で難解なのですが、
幻の蝶に扮した加賀まりこのクールな美しさがとにかく秀逸なので、
ぜひ観てもらいたいです。目の保養になること間違いなし。
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『月曜日のユカ』
DVD 1,800円(税別)
発売中
発売元:日活
販売元:ハピネット
(C)1964日活
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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