キノ・イグルーの週末シネマ​ no.38
九月に降る風|春はお別れの季節いつまでも友だちのカバー画像

九月に降る風|春はお別れの季節いつまでも友だちで

文:キノ・イグルー 有坂塁

九月に降る風|監督:トム・リン(2008年・台湾)

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2018年03月09日作成


1994年春の話から始めてみようと思います。

19歳からの2年間、ぼくは生まれ育った東京を離れ、石川県のサッカー専門学校へ通っていました。

プロを目指し、日夜練習に明け暮れるという毎日を過ごしていました。


一方、みな一人暮らしのため、空いた時間を使って映画を見ている人が多かった。

特にぼくの学年は映画好きが揃っていて、地方遠征のバス移動は必ず映画鑑賞です。

何を見るかは数人でレンタルショップへ行き、ああだこうだ言って決めます。

今考えると、その時間がとっても楽しかった。


結果、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ホーム・アローン』

『いまを生きる』『トップガン』などを鑑賞。

『グーニーズ』を見たときは、シンディ・ローパーの主題歌を大合唱したりもしたなあ。



ときは変わって、15年後、2009年9月の東京。

予定していた打ち合わせが急きょ飛んでしまったぼくは、

近くにあった映画館「ユーロスペース」で、

タイミングよく上映されてる映画を観ることにしました。

タイトルは『九月に降る風』…

***

台湾の新竹。学年も生活環境も異なる7人の男子高校生たち。

野球場で騒いだり、深夜の学校のプールに忍び込んで裸で泳いだり、屋上で弁当を食べたり、

大樹の下で無駄話をしながら悪ふざけをしたり…、彼らはいつも一緒だった。

そんな“問題児グループ”のリーダー格が、3年生のイェンだ。

生真面目な同級生タンは、そんなイェンを羨望と嫉妬の眼差しで見つめていた。

ところがある日、イェンとタンの間に微妙な感情の溝ができ、

そしてその関係修復も束の間、思いがけない事故が彼らの身に降り注ぐ…

***


他愛ない悪ふざけに無邪気に笑いあったり、

くだらない話で笑いが止まらなくなったり…

そんな誰もが経験したことがあるような、この時期特有の無敵な感じが

理屈を飛び越え、まっすぐ響いてきます。

しかも楽しいだけじゃなく、ほろ苦くて、せつない。

これぞ、青春。

ふと出来た空き時間で、

思いがけず、打ちのめされるような感動を味わうことができたのです。


上映後、旧友に電話をかけました。

10数年ぶりでしたが、番号は変わっていなかった。

彼は土木関係の会社を起業し、ぼくは移動映画館をやっている。

互いに環境は変わっても、声を聴いた瞬間、あの頃のあの感覚に戻ることができる。

それってとっても幸せなことじゃないか、そんなことを考える。

「まだ映画が好きだよ」と言った彼に、ぼくは『九月に降る風』を勧めたのだけれど、

結局彼は観てくれたんだろうか。


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『九月に降る風』
DVD 3,990円(税込)
発売・販売元:アミューズソフトエンタテインメント
(C)2008 Mei Ah Entertainment Group

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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