キノ・イグルーの週末シネマ​ no.95
三匹荒野を行く|ひとクセあるけれど愛おしいねのカバー画像

三匹荒野を行く|ひとクセあるけれど愛おしいねこ

文:キノ・イグルー 有坂塁

三匹荒野を行く|監督:フレッチャー・マークル(1963年・アメリカ)

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2019年04月12日作成



ご贔屓にしている猫がいます。

その子は、家猫でなく、ストリート系。

いわゆる、ノラネコです。


駅から家までの道のりに、いたりいなかったりするのですが、

毎晩、お鮨屋さんから高級マグロをもらいに来ている贅沢ものです。

でもそのマグロにも飽きているようで、

平気で残したまま「ほかのご飯くれ」アピールしているところを

最近よく見かけます。その姿の愛らしいことよ!


ぼくのインスタグラムの中で

"吉祥寺にいたりいなかったりのニャン"という

ハッシュタグでまとめているので、よかったら見てみてください。

いや必ず!


さて、この子はストリート育ちのため、

引っ掻き傷をちょいちょい見かけます。

それを見るたび「大きな動物と戦ったんじゃなかろうか!」

なんて妄想を抱いてしまうのですが、

それもこれも、偉大なるディズニー映画『三匹荒野を行く』を

観てしまったせいなのです。


***


カナダの小さな町。

ハンター教授一家は夏の間、特別講座を頼まれてイギリスに行った。

ハンターの一家に飼われていたラブラドル犬、

ブルテリア犬、そしてシャム猫の三匹は、

一家が留守になる夏の間だけ友人の家に預けられることに。

しかし三匹は、主人の一家が忘れられず、

ついに320キロ離れた我が家を目指して歩き出す…


***


本作は80分間にわたって、人間がほとんど出てきません。

画面に映るのは、犬2匹とシャム猫ばかり。

リーダーのラブラドールが先頭を歩き、

老犬のブルテリアがそのあとをヨボヨボ歩きます。

そしてシャム猫はというと、自由気ままにあっち行ったりこっち行ったり。


先頭に立ったと思ったら、柵の上を走ったりと道草ばかりを繰り返します。


でもその気ままさがあるおかげで、

作品にユーモラスな雰囲気が生まれ、

話も重苦しくならないのだと思います。

そう、猫って思っている以上に、偉大な動物なのです。


先に書いた「大きな動物」と妄想してしまうのは、

本作の中でシャム猫が巨大熊と戦うシーンがあるから。

襲われかけている老犬を助けようと、小さな体を投げ出し、

熊の前に立ちはだかるシャム猫。

背中を丸め、耳を伏せ、シャーシャーと威嚇を繰り返します。

そのバトルの行方に関しては、ぜひ本編でご確認ください。


ちなみに本作は、1963年の作品のため、CGは一切使っていません。

動物が擬人化されていないし、しゃべりだすこともないため、

ドキュメンタリーを観ているような迫力に満ちていて、見ごたえ十分です。


おそらく鑑賞後は、街でノラ猫を見かけるたびに、

このシーンを思い出すことになると思います。

どんなときでも映画のことを思い出せる人生も、

決して悪いものではありません、よ。


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『三匹荒野を行く』
DVD 2,800円+税
発売中
(C) 2019 Disney

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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