ご贔屓にしている猫がいます。
その子は、家猫でなく、ストリート系。
いわゆる、ノラネコです。
駅から家までの道のりに、いたりいなかったりするのですが、
毎晩、お鮨屋さんから高級マグロをもらいに来ている贅沢ものです。
でもそのマグロにも飽きているようで、
平気で残したまま「ほかのご飯くれ」アピールしているところを
最近よく見かけます。その姿の愛らしいことよ!
ぼくのインスタグラムの中で
"吉祥寺にいたりいなかったりのニャン"という
ハッシュタグでまとめているので、よかったら見てみてください。
いや必ず!
さて、この子はストリート育ちのため、
引っ掻き傷をちょいちょい見かけます。
それを見るたび「大きな動物と戦ったんじゃなかろうか!」
なんて妄想を抱いてしまうのですが、
それもこれも、偉大なるディズニー映画『三匹荒野を行く』を
観てしまったせいなのです。
***
カナダの小さな町。
ハンター教授一家は夏の間、特別講座を頼まれてイギリスに行った。
ハンターの一家に飼われていたラブラドル犬、
ブルテリア犬、そしてシャム猫の三匹は、
一家が留守になる夏の間だけ友人の家に預けられることに。
しかし三匹は、主人の一家が忘れられず、
ついに320キロ離れた我が家を目指して歩き出す…
***
本作は80分間にわたって、人間がほとんど出てきません。
画面に映るのは、犬2匹とシャム猫ばかり。
リーダーのラブラドールが先頭を歩き、
老犬のブルテリアがそのあとをヨボヨボ歩きます。
そしてシャム猫はというと、自由気ままにあっち行ったりこっち行ったり。
先頭に立ったと思ったら、柵の上を走ったりと道草ばかりを繰り返します。
でもその気ままさがあるおかげで、
作品にユーモラスな雰囲気が生まれ、
話も重苦しくならないのだと思います。
そう、猫って思っている以上に、偉大な動物なのです。
先に書いた「大きな動物」と妄想してしまうのは、
本作の中でシャム猫が巨大熊と戦うシーンがあるから。
襲われかけている老犬を助けようと、小さな体を投げ出し、
熊の前に立ちはだかるシャム猫。
背中を丸め、耳を伏せ、シャーシャーと威嚇を繰り返します。
そのバトルの行方に関しては、ぜひ本編でご確認ください。
ちなみに本作は、1963年の作品のため、CGは一切使っていません。
動物が擬人化されていないし、しゃべりだすこともないため、
ドキュメンタリーを観ているような迫力に満ちていて、見ごたえ十分です。
おそらく鑑賞後は、街でノラ猫を見かけるたびに、
このシーンを思い出すことになると思います。
どんなときでも映画のことを思い出せる人生も、
決して悪いものではありません、よ。
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『三匹荒野を行く』
DVD 2,800円+税
発売中
(C) 2019 Disney
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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