今年は、マサラムービーが日本に上陸してから
20周年という記念年なんです。ひそかに。
マサラムービーとは、コメディー・ミュージカル・アクション
ラブストーリーなど、ジャンルをごった煮にした
インド発エンターテイメント作品のことなんですが、
そんなマサラムービー元年となったのが、1998年。
いま思い出すだけでも、当時の熱気って本当にすごかったです。
『アメリ』や『トレインスポイッティング』などを上映し、
おしゃれなミニシアターとして名を馳せていたシネマライズが、
そのイメージとは180度異なる、むさ苦さ全開なインド映画を上映する。
しかも、その作品のキャッチコピーが、
「絢爛豪華で空前絶後、驚天動地で超級無敵、自由奔放で一石百鳥…。
映画の楽しさと快楽をすべて詰め込んだ、
キング・オブ・エンタテインメント!」という強烈な内容なのです。
みな、よく言ったものです、「ライズらしくない…」と。
しかしその作品こそが、いまや伝説となっている
『ムトゥ 踊るマハラジャ』だったのです。
あまりの面白さに、口コミが口コミを呼んで、
渋谷のスペイン坂では連日、大行列ができる事態に。
そして、異例の大ヒットを記録。
ついに日本でも、マサラムービーが広く認知されることとなったのです。
ところが…
早いもので数年経ったら、みなさん歌って踊ってという
マサラムービーに胃もたれしてきたようで、
「インド映画って、どれも同じだよね」という微妙な空気に。
そんな危機的なタイミングで、
まさかのビッグサプライズを起こしてくれたのが、
今回ご紹介する『きっと、うまくいく』なのです。
***
日の出の勢いで躍進するインドの未来を担うエリート軍団を輩出する、
超難関理系大学ICE。エンジニアを目指す天才が競い合うキャンパスで、
型破りな自由人のランチョー、機械より動物好きなファルハーン、
なんでも神頼みの苦学生ラジューの“三バカトリオ”が、
鬼学長を激怒させ、珍騒動を巻き起こす…
***
これまでのマサラムービーのように、
本作もたくさん踊って、たくさん歌います。
ただ、そこに深みのある人間ドラマを加えたところが、
とにかく新しかった!
一見ただのコメディに見えますが、インドの激しい学歴社会や、
それによって引き起こされる若者の自殺といった社会問題も取り上げ、
現代社会を風刺しています。
かと言ってシリアスになりすぎず、
「なんとかなるさ!」という底抜けの明るさに支えられているところが
素晴らしいんですね。
おまけにストーリーテリングが巧みで、
笑って泣いてあっと言う間の170分なのです。
インドアカデミー賞では、作品賞をはじめ16部門を受賞し、
歴代の興行収入でも、なんと、ナンバーワンを記録。
これぞ、新時代のインド映画の名作!
といって差し支えはないと思います。
みなさんも騙されたと思って、ぜひ観てみてくださいね。
************************************************
『きっと、うまくいく』
DVD:4,620円
Blu-ray:5,720円
DVD&Blu-ray好評発売中
発売元:株式会社ハピネットファントム・スタジオ
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
(C)Vidhu Vinod Chopra Production 2009.All rights reserved
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
Instagram Web Site