キノ・イグルーの週末シネマ​ no.222
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100歳の華麗なる冒険|元気なおじいちゃん・おばあちゃんから、敬老の日はパワーをもらおう

文:キノ・イグルー 有坂塁

100歳の華麗なる冒険|監督・脚本:フェリックス・ハーングレーン(2013年・スウェーデン)

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2021年09月17日作成



今回のテーマのおかげで、20年以上失念していたあることを思い出しました。

それは、20代前半の頃のこと。

「敬老の日」当日に"ひとり上映会"なるものを、

1人ひっそりとおこなっていたのでした。


おじいちゃん・おばあちゃんを魅力的に描いた作品を、

「敬老の日」当日に鑑賞する。ただそれだけのもの。

でも、前年亡くなった大好きなおじいちゃん・おばあちゃんを思い出したくて、

2人への追悼の意も込め、毎年欠かさず開催していたのです

(といっても、5年ほどですが…)


何を観てたんだろ。

ちょっと、記憶を辿ってみようと思います。


パッと思い出せるのは、この2本。

ふたりの老人が盗んだジープを走らせるアイスランド映画『春にして君を想う』(1991)。

海沿いのサマーハウスを舞台にした老姉妹の物語『八月の鯨』(1987)。

あとは…

アル・パチーノ演じるおじいちゃんと映画の世界に憧れる少年の感動作

『天国の約束』(1995) も上映しました!


残り2本、何だっけな~。本気で思い出せません 笑

では、この原稿を書き終わるまでには何とか思い出すので、

すみません、しばし保留でお願いします!笑


先に進みますね。

今回ご紹介したい"おじいちゃん・おばあちゃん映画"は、

スウェーデンの作品『100歳の華麗なる冒険』。

キービジュアルを観るかぎり、

ポップでアットホームなコメディ映画かと思いましたが、

意外や意外、予想を覆す作品に仕上がっていました。


まずはストーリーからご確認ください。


***


100歳の誕生日を祝われるはずだったアランは老人ホームから逃げ出し、

バスに乗ってあてのない旅に出発。

偶然降りた駅の近くに住むユーリウスと酒を酌み交わし意気投合。

しかしその道中、ギャングの闇資金入りスーツケースをひょんなことから入手したため、

警察とギャングに追われる身になってしまう。

アランはいかなるトラブルに見舞われようとも、超人的なマイペースぶりを発揮。

はたして彼は何者なのか?

なんと、歴史上の何人もの要人と親交を持ち、

20世紀における国際情勢の大きな節目に居合わせてきた"重要人物"だったのだ。

摩訶不思議な人生をおくってきたアランと、

その仲間たちとの新たな冒険がはじまる。


***


予想を覆される驚きの内容とは…

それはブラックユーモアの分量についてです。


主人公はのほほんと生きていているし、作品の雰囲気だって確かにアットホーム。

でもそのムードを壊さぬままに、

突然「えっ!」と声をあげてしまう、もの凄いことが起こるんです。

まるで何事もなかったかのように。

そんなシュールなテイストも含む、コメディ作品となっています。


ひょんな事から大金の入ったケースを手に入れ、

ギャングに追われる100歳のおじいちゃん。

しかし本人は、そんな事になっているとは気づかず、出会った人と珍道中。

そんな現代パートも面白いのですが、

過去のパートがおじいちゃんの魅力を惹き立てます。


回想シーンって、しみじみしたものになりがちですが、

このおじいさんに平凡な人生はありません!

文字通り"ブッ飛んだ"人生を歩んできたことが、ここでわかるのです。


彼は訳あって、数々の歴史的事件や多くの歴史的人物と会ってきていました。

東西冷戦時代には米ソの二重スパイとなって、

レーガンやゴルバチョフのもとで働くことになったり、

"あの"独裁者とも対面していたり…

そんな特殊な状況でも、彼は全く臆すること無く、

フレンドリーに酒を飲み交わすのです。


終始一貫、成り行きまかせで、激動の20世紀を駆け抜けていく。

一部では、過激な『フォレスト・ガンプ』なんて言われている、

奇想天外な北欧コメディです。

「もしかしたら、自分のおじいちゃんも…」

そんなことを想像しながら観るのも、乙かもしれません。



最後に。

思い出しました、あと2本。

小津安二郎の名作『東京物語』(1953) と、

白人の老婦人と黒人の運転手の心の交流を描いた『ドライビング Miss デイジー』(1989) でした。


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『100歳の華麗なる冒険』
Blu-ray 2,750円(税込)
発売・販売元:KADOKAWA

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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