フリッパーズ・ギター、スチャダラパー、ピチカート・ファイヴ…
90年代に巻き起こった一大ムーブメント「渋谷系」の根幹にあったのは、
古今東西の音楽を新たな解釈で構築し直す"サンプリング"という概念でした。
リスナーとして耳にしたお気に入りフレーズを、
オリジナル楽曲に組み込むというサウンドコラージュのような世界観。
それをフリッパーズは
「盗作の果てのオリジナリティー」なんて気の利いた言葉で表現したけれど、
渋谷系ミュージシャンは一様に、サンプリングする際は、
元ネタが明らかに分かる形でなければならないというスタンスでした。
それは、作り手へのオマージュです。
尊敬や敬意、音楽への「愛」が
何よりも大切だという純粋な想いそのものが、
渋谷系の空気をピースフルにしていたようにも思います。
(「愛だろ、愛っ」という名コピーも90年代でしたね)
そんなオマージュ文化は、
映画の世界でも1960年代のヌーヴェルヴァーグや
クエンティン・タランティーノ作品などを筆頭に数多く見受けられますが、
ついに2018年、
ポップカルチャーへのオマージュばかりで構成されたような
怪作が公開されることになります。
VR世界を疑似体験できるアドベンチャー作品『レディ・プレイヤー1』です。
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西暦2045年、カオスと荒廃に沈む世界で、
人々は"オアシス"に救いを求めた。
それはエキセントリックな天才ジェームズ・ハリデーが創造した、
夢のようなVR<バーチャル・リアリティ>ワールドだった。
ハリデーの死後、その莫大な財産は
"オアシス"内に隠されたデジタルのイースター・エッグを
最初に見つけた者に与えられることに。
そこで宝探しに参加したのが、
およそヒーローには程遠い若者ウェイド・ワッツ。
そんな彼を待ち構えていたのは、猛スピードで繰り広げられる、
謎と発見と危険に満ちた冒険の連続だった…
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このイースターエッグ(隠れアイテム)を探し出すという
ストーリーと同じように、本作自体にもゲーム・漫画のキャラクターや、
映画に登場する車、実在するバンドだったりと、
無数のオマージュや引用が遊び心とともに込められています。
完全把握は無理!というほどに出てくるのですが、
たとえば、数秒のみ出てくる映画ネタだけでも、
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ジュラシック・パーク』
『トランスフォーマー』『グーニーズ』
『アイアン・ジャイアント』『マッドマックス』『スピード・レーサー』
『シャイニング』など。
しかも、これはごく一部です。
他にも、マーベルやハローキティ、ゴジラ、
ガンダムなどのキャラクターものから、
デジモン、マリオカートといったゲームまで、
文字通り、おもちゃ箱をひっくり返したような世界が展開されます。
これらはすべて、
原作者であるアーネスト・クラインのポップカルチャーへの
熱い想いが形になったものなのですが、
普通に考えたら、版権問題で映像化は到底不可能。
しかしなぜ成立したかというと、
理由は簡単!
監督がスティーヴン・スピルバーグだから!笑
彼に決まった時点で、使用許諾が次々と降り、
この夢のようなプロジェクトが実現してしまったのだそうです。
スピルバーグってなんなんだ(笑) 本当にすごい!
そんな本作を観る際は、かつての渋谷系リスナーと同じように、
ぜひ"元ネタ探し"も一緒に楽しんでください。
作り手が忍ばせた"オマージュ"を見つけ出すことができれば、
そこからあなたの世界はまた大きく広がっていくはずです。
愛を循環させていきましょう。
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『レディ・プレイヤー1』
Blu-ray 2,381円+税
DVD 1,429円+税
発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
© 2018 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited and RatPac-Dune Entertainment LLC. All rights reserved.
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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