この原稿を書き始めようと決めたその日から、

どうやらぼくは星の世界へと引っ張られているようです。


「きっと好きだから」と友人がプレゼントしてくれた本は、

吉田篤弘さんの「ブランケット・ブルームの星型乗車券」。

居酒屋へ行けば、中山美穂の「You're My Only Shinin'Star」が聞こえよがしに流れ、

映画館で立て続けに観た『青い、森』と『星の子』という日本映画は、

ともにラストシーンが絵に描いたような満天の星空。

そしてリアルな夜空を見上げても、無数の星が輝いているという、

およそ理屈では説明できない現象が次々起こっています。


でも不思議ですけど、こういうことって、時々起こるんですよね。

（初めて『となりのトトロ』を鑑賞した後は、井の頭公園でどんぐりが降ってきた）


そのように大きな何かに導かれているような心地よい気分で、

いまぼくはこの原稿を書いています。


今回、ぜひご紹介したい！と思った台湾映画『星空』は、

我がイベント「ピクニックシネマ2019」のときに、

＂星空の下＂で野外上映を行った思い出深い1本。


台湾映画らしい共感性の強さとともに、

心に染み入る素敵なファンタジーでもあります。


内容はこんな感じ。


＊＊＊


素敵な美術品に囲まれた家に暮らす少女。

しかし、美術商の両親は出張で家を留守にすることが多く、

彼女はいつも孤独を感じていた。

両親の離婚も秒読み状態となり、

やさしいおじいちゃんも死んでしまった。

ついに居場所がなくなってしまったと感じていた彼女は、

スケッチブックを抱えてさまよう不思議な転校生の少年と出会う。

ともに孤独を感じていた少女と少年は、

この世でもっとも美しい星空を見るため一緒に家出をする。


＊＊＊


この作品は、台湾の絵本作家ジミー・リャオのベストセラーを映画化したものですが、

ジミー本人の指名により、監督はトム・リンが起用されました。

（デビュー作にして、青春映画の傑作『九月に降る風』が認められたのだとか）


これは村上春樹が『ノルウェイの森』に

トラン・アン・ユン監督を指名したのと同じ理由で、

原作の持つ＂唯一無二の世界観＂そのものを映像化できる才能として、

トム・リンに白羽の矢が立ったそうです。


そして、そのキャスティングは大正解。

絵本をモチーフにしたファンタスティックなシーンを挿入しながらも、

甘すぎないセンスがとってもいい！

このバランス感覚は、ジミーが求めていたデリケートな部分と思われます。


＂子供と大人の世界の真ん中、心に傷を負った二人は旅に出る＂

そんな13歳の心の中の純粋と夢想と痛切と出逢いを、

こんなにもファンタジックに描いて感動させられるなんて、

本当に特別な才能です。

1976年生まれ、カリフォルニア芸術大学院にて映画を学んだトム・リン、

ぜひみなさん、覚えておいてください。


ちなみに、とっておきの星空のシーンは、観てからのお楽しみ。

ここで語ってしまっては、すべてが台無しになりますからね。

でもまあ、物静かながら、人とは違う魅力をもつジミーとの星空を探す冒険、

というシチュエーションだけでグッときますよね？

果たして彼らは、どのような状況で星空までたどり着くのでしょうか。


最後に余談ですが、

ゴダールとアンナ・カリーナの『はなればなれに』(1964) が好きな方、

あの名シーンを2人が再現してくれますので、乞うご期待！です

（どのシーンかわかりますよね？）


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『星空』
DVD：4,290円
Blu-ray：5,280円
DVD＆Blu-ray発売中
発売元：ポリゴンマジック
制作協力：ファイヤークラッカー
販売元：ハピネット・メディアマーケティング
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