この『アラジン』を選んだ時点で、
まだアカデミー賞は開催されていませんでした。
ウィル・スミスについて、です。
みなさんもご存知だとは思いますが、
本年のアカデミー賞授賞式でプレゼンターのクリス・ロックを平手打ちしてしまった
"ザ・フレッシュ・プリンス"ことウィル・スミス。
いまだ議論は続いており、賛否両論、様々な意見も出ていますが、
答えを一つにしようとする動きは、やっぱり怖いなぁと感じます。
答えは、それぞれの中で。
そしてどちらにせよ、その答えを尊重し合ってほしい。
多様性の時代ですから、ね。
さて。
すっかりスキャンダラスなイメージがついてしまった彼ですが、
才能に関しては群を抜いたものがあります。
元々はラッパーとしてデビューし、グラミー賞を受賞。
テレビ界へ進出すれば、即ブレイク。
勢いそのままに『インデペンデンス・デイ』『メン・イン・ブラック』で、
ドル箱スターの仲間入りを果たし、
『ALI アリ』『幸せのちから』のシリアスな演技が高く評価され、
アカデミー賞主演男優賞にもノミネート。
そして今回、テニスのウィリアムズ姉妹の父親役を演じた『ドリームプラン』で、
念願の初オスカーを獲得することとなったのです。
まさに順風満帆。
そんな彼のキャリアの中でも、
個人的にベストアクトの一つだと思っているのが、
実写版『アラジン』のジーニー役。
世界中で愛される人気キャラクターという、
リスクしかない役に果敢にチャレンジし、最高の成果を挙げたウィル。
彼にしか生み出せない躍動するランプの魔神に、
心を奪われた人はたくさんいるはず。
そんなウィルの話の前に、
まずはストーリーからご確認ください。
***
貧しくも清らかな心を持ち、
人生を変えたいと願っている青年アラジンが巡り合ったのは、
王宮の外の世界での自由を求める王女ジャスミンと、
"3つの願い"を叶えることができる"ランプの魔人"ジーニー。
果たして3人はこの運命の出会いによって、
それぞれの"本当の願い"に気づき、それを叶えることはできるのか?
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監督を務めたのは、
『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』
『スナッチ』『シャーロック・ホームズ』などの鬼才ガイ・リッチー。
スタイリッシュなエンタメを得意とする彼は、
オリジナル版『アラジン』(1992) を踏襲しつつも、
ジャスミンのキャラクターを深掘りするなど、
2019年版の『アラジン』へとアップデート。
ラブコメ要素に加え、お得意のアクションや、
ボリウッドを彷彿とさせるダンスシーンをミックスし、
ディズニー映画とは思えないカオスな世界観を作り上げました。
そしてこの"カオス"こそが、物語にパワフルな魅力を与え、
"ハリウッド最強のエンターテイナー"ウィル・スミスが輝く
大きな要因ともなったのです。
彼はインタビューで、こう答えています。
「音楽を思い浮かべていたら、
自分のなかでジーニーというキャラクターがイキイキと生まれてきた。
そしてジーニーは長い間、ランプに閉じ込められていたから、
ここから出たら"パーティーしたいぜ"って思うはず。
とにかく楽しみたいし、パーティーしたいし、ドレスアップもしたい…
と想像していくことで、どんどんキャラクター像が作られていったんだ」。
モハメド・アリ役は替えが利いても、
ジーニー役に関しては、彼しか演じることが出来なかったと思います。
持って生まれたスター性。
さらにクセの強さを生かしたコミカルな演技やダンスシーンが、
何でもありの"ファンタジー"という世界に、
より大きな魅力を加えてくれています。
今まで考えたこともなかった、
ウィル・スミスとファンタジー映画の相性の良さ。
日々に追われている皆さんにこそ観てもらいたい、
究極の現実逃避ムービーとなっています。
もちろん、名曲「A Whole New World」も
あのシーンで聴くことができますよ。ぜひ。
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実写版『アラジン』
ディズニープラスで配信中
公式サイト:https://disneyplus.jp/
© 2022 Disney
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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