パッと思い浮かんだのは、3人でした。
サングラスが似合っている女優さん。
1人目は、『レオン』(1994)のナタリー・ポートマン。
かけているのは、丸いラウンドタイプのサングラスです。
憧れのレオンに少しでも近づこうと、彼のことを真似る健気なマチルダ。
そのサングラスとニット帽姿は、
彼女の象徴でもあるボブヘアと相まってなんともファッショナブル。
チョーカーも素敵です。
『昼顔』(1967)のカトリーヌ・ドヌーヴも忘れられません。
貞淑な妻でありながら、高級娼婦でもあるセブリーヌ。
彼女は、娼婦の館に出勤するときでもいつもと服装は変わらないのですが、
サングラスは唯一の変装道具になります。
この主張強めなサングラスが、
イヴ・サンローランのミリタリーコートとピルボックス帽によく合うのです。
そして3人目は、
今回ご紹介する『ティファニーで朝食を』(1961)のオードリー・ヘプバーン。
60年経った今でも色褪せない、タイムレスな輝きを放つ彼女の代表作。
こちらには、神童トルーマン・カポーティによる原作(中編小説)があって、
そこで描かれていない場面こそが、本作の最も印象に残るシーンとなっています。
その場面でオードリーがかけているサングラスの、なんとまあ魅力的なこと!
その話に入る前に、、、
まずはストーリーからご確認いただきたいと思います。
***
ニューヨークのアパートで猫と暮らしているホリーの念願は
"ティファニー"のようなところで暮らすことだ。
ある日、彼女のアパートに作家志望の青年ポールが引っ越してくる。
自由奔放で不思議な魅力を持つホリーに、次第にひかれていくポール。
ところが、テキサスからホリーの夫が彼女を連れ戻しにやって来て…
***
先ほど話した名シーンとは、この物語のオープニングにあたる場面です。
一度でも観たことがある方なら、「わかる!」と膝を打って同意してくれるはず。
おしゃれで、ミステリアスな雰囲気の2分半。
映画史にも残るとまで言われるオープニングシーンは、このようにして始まります。
【早朝のニューヨーク五番街。
車も人もいない閑散とした街に一台のタクシーが止まった。
そこから降りてくるのは、全身黒づくめのエレガントな女性。
ジバンシィのカクテルドレスに、フレームの大きなサングラス、
首元には黒を引き立てるパールとダイヤモンドのネックレス。
彼女は、「ティファニー」のショーウィンドウを眺めながら、
紙袋から取り出したデニッシュとコーヒーで朝食をとる。
ヘンリー・マンシーニの名曲「ムーン・リバー」のメロディとともに。】
こうして言葉にするだけでも、心が揺さぶられます。
と同時に、どうしてこのシーンはこれほどまでに美しく、
強烈なイメージを放っているのか。脳裏に焼き付いて離れないのか。
すると、オードリーがかけている"サングラス"が
ただのおしゃれアイテムとしてだけではなく、
とても大きな意味を持っていることに気づくわけです。
「目は口ほどにものをいう」ということわざがあるように、
目はその人の印象や内面を表します。
でもこの場面でオードリーの内面を読み解くことはできません。
何を考えているのか、どんな人なのか。
サングラスの向こうの感情には、たどり着けない作りになっているわけです。
でもそこがボヤッとしているからこそ、言葉に変換できないからこそ、
イメージとして脳裏に焼きつくんですね。
「素敵だったなぁ…」という余韻とともに。
このシーンでオードリーがかけているサングラスは、
"自由と個性のアイコン"として知られる、レイバンのウェイファーラー。
夏らしいサングラススタイルを探している方、
ぜひ参考までに、ご覧になってみてはいかがでしょうか。
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『ティファニーで朝食を』
DVD 1,572円(税込)
DVD&Blu-ray 発売中
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2021年7月の情報です。
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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