人間関係にモヤモヤしていた時期に、
ハッとさせられた言葉が2つあります。
・「人付き合いがうまいというのは、人を許せるということだ」
(詩人:ロバート・フロスト)
・「ほとんどすべての人間関係の間違いは、距離感の間違いだ」
(コピーライター:田中泰延)
これら道しるべになった言葉が示すのは、
いかに客観的な目線をもって、相手を受け止められるかということ。
当然ですが、自分と他人の価値観や考え方は、必ずしも同じではありません。
彼らはどうしてそう考えるのか。なぜそのような態度をとるのか。
その場の感情に呑み込まれずに、
立ち止まって相手を見ることこそが大事なのかもしれませんね。
なんて、言うは易しで、
わかっていても悩んでしまうのが、人間関係。
でも僕自身マインドセットを変えたら、気持ちが楽になったことも事実なので、
よろしければ参考にしてみてください。
さて。
今回紹介する『コーダ あいのうた』ですが、
人間関係の基本とも言える"家族"にフォーカスした一作。
近しい関係がゆえに、こじれるとなかなか修復できないのが家族ですが、
本作はその壁をも乗り越えていってくれる力強い作品となっています。
まずは、その内容からご確認ください。
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豊かな自然に恵まれた海の町で暮らす高校生のルビーは、
両親と兄の4人家族の中で一人だけ耳が聴こえる。
陽気で優しい家族のために、ルビーは幼い頃から"通訳"となり、
家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。
新学期、秘かに憧れるクラスメイトのマイルズと同じ合唱クラブを選択するルビー。
すると、顧問の先生がルビーの歌の才能に気づき、
都会の名門音楽大学の受験を強く勧める。
だが、ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられず、
家業の方が大事だと大反対。
悩んだルビーは夢よりも家族の助けを続けることを選ぶと決めるが、
思いがけない方法で娘の才能に気づいた父は、意外な決意をし…
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主人公ルビーの家族である3人は、耳が聴こえない分、
喜怒哀楽の表情が豊かで、全身で気持ちを表します。
ヴァイタリティに溢れていて、底抜けに明るい。
そんな家族のことをルビーがどれだけ愛しているかが、
映画の序盤、表情やコミュニケーションなどを駆使して、
ユーモアたっぷりに描かれます。
そこを丁寧に描いたからこそ、その後の葛藤は心が痛いし、
一層応援してあげたい気持ちになるのです。
家族のために"伝える人"を選んだ彼女も、まだ高校生。
家族、友人、恋人といった人間関係のなかで、
もがきながらも、必死に夢へと立ち向かう姿には、
強く勇気づけられることでしょう。
と同時に、素直に「家族っていいなぁ」とも思えるはずです。
その意味において、
本作は『リトル・ダンサー』や『遠い空の向こうに』といった
映画史に残るヒューマンドラマと同列に語っていい作品かもしれません。
未見の方は、こちらも合わせてご覧になってみてください。
第94回アカデミー賞では、作品賞、脚色賞、
助演男優賞(トロイ・コッツァー)の3部門にノミネートされ、全部門で受賞。
父親を演じたトロイ・コッツァーは、実際に耳が不自由な俳優で、
ろう者の俳優が受賞するのはアカデミー初の快挙だそうです。
そんなダイバーシティを象徴するようなヒューマンストーリー。
ぜひ、この週末にご覧になってみてください!
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『コーダ あいのうた』
Blu-ray:¥5,280(税込)
DVD:¥4,180(税込)
© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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