あと数日で「平成」が終わります。
「平成の歌姫」「平成の一冊」など、
さまざまな媒体で平成を総括する特集が組まれていますが、
こと映画となると、じつはさっぱりだったりするのです。
なぜか?
映画は、制作された年や公開年の表記が"西暦"で統一されているから。
たとえば『フォレスト・ガンプ 一期一会』が1994年の映画だと知ってはいても、
平成6年の作品と言う人は皆無だと思います。
実際には「平成映画特集」なるものはあるにはあるのですが、
結局、西暦に置き換えて説明するというややこしさ。
まあ、世界各国で制作されたものを日本の元号で表現すること自体に
無理があるのかもしれませんが。
でも、日本の役者さんであれば考えやすい。
昭和を代表する女優なら、原節子、京マチ子、
夏目雅子、吉永小百合(昭和顔の平成女優なら、黒木華)。
そして、平成生まれ屈指の名女優となれば、
ぼくの中では広瀬すずということで決まっています。
初見で彼女は、10年にひとりの逸材だと思いました。
そう、是枝裕和監督作『海街diary』での演技です。
それはそれは鮮烈すぎるほどのインパクトを、
そして明るい未来を、与えてくれました。
***
鎌倉に暮らす長女・幸、次女・佳乃、三女・千佳の香田家3姉妹のもとに、
15年前に家を出ていった父の訃報が届く。
葬儀に出席するため山形へ赴いた3人は、
そこで異母妹となる14歳の少女すずと対面。
父が亡くなり身寄りのいなくなってしまったすずだが、
葬儀の場でも毅然と立ち振る舞い、そんな彼女の姿を見た幸は、
すずに鎌倉で一緒に暮らそうと提案する。
その申し出を受けたすずは、香田家の四女として、
鎌倉で新たな生活を始める…
***
広瀬すずが演じたのは、物語の中心となる腹違いの妹「浅野すず」。
そう、名前が一緒なのです。最初は話題作りのため?
なんてうがった見方をしていたのですが、
ただの偶然だったのだから驚きます。
(吉田秋生さんによる原作漫画にも浅野すずは出てきます)
そして彼女の伝説の第1章として、
後々、語られていくような名エピソードだなとも思いました。
こういった引きの強さも、大女優の資質のひとつ。
ハリウッドデビュー作で、瞬く間にアカデミー主演女優賞を獲得してしまった
『ローマの休日』のオードリー・ヘプバーンのように。
その堂々とした佇まいと、深みのある演技は、
3姉妹を演じた長澤まさみ、綾瀬はるか、夏帆だけでなく、
稀代の名女優・大竹しのぶを向こうに回しても、
一切引けを取りませんでした。
さらに、サッカーまで天才的にうまいんです!
後ろから来たボールを走りながらワントラップし、
そのままドリブルに移行する動きはスムーズそのもの。
まるでなでしこジャパン。
きっと彼女は、すべてにおいて"勘がいい"人なのでしょう。
そんな才能あふれた広瀬すずを平成を代表する名女優!
と言い切ってしまうことに異論のある方はいらっしゃるでしょうか。
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『海街diary』
DVD 3,800円+税
Blu-ray 4,800円+税 他
好評発売中
発売元:フジテレビジョン
販売元:ポニーキャニオン
(C)2015吉田秋生・小学館/フジテレビジョン 小学館 東宝 ギャガ
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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