春の訪れとともに、前向きな気持ちが戻ってきました。
"このパンデミックは、いつの日か収束する!"
そんな当たり前なことを、今朝、井の頭公園のランニング時に、
まるで天啓のように感じることが出来ました。
冬の間中、ぼやーとしていた僕の視界に、はっきりと光が見えた。
そう、いつか終わりは来るんです。
来年か5年後かわからないけれど、必ず。
それなら、と。
原点に立ち返り、物事を"未来"から考えてみることにしました。
こういうときこそ、想像力です。イマジネーションです。
コロナ後の世界から、2021年を眺めてみる。
『ベルリン・天使の詩』で言うところの天使の目線で。
その視点に立つことで、この特殊な状況下でやっておかないと後悔することが、
たくさんある気がしてきました。
細かいことも含め、"いま"しか感じられない様々なことが。
今回選んだ『ゴースト/ニューヨークの幻』は、
"会いたいけど会えない"という、
コロナ禍の気分にぴったり寄り添ってくれる一作です。
きっと平常時に観るよりも、会えない切実さが身にしみて、
より映画の世界に没入できるはず。
映画はタイミングがとても大事なので、
未見の方は、ぜひ"いま"観てくださいね。
主演は、デミ・ムーアとパトリック・スウェイジ。
ウーピー・ゴールドバーグは、本作の霊媒師役でアカデミー助演女優賞を獲得しました。
ストーリーは、このような感じとなっています。
***
ニューヨークで同棲生活を始めた銀行員サムと恋人モリー。
だがモリーがサムにプロポーズした夜、2人は暴漢に襲われ、
愛するモリーを守ろうとしたサムは命を落としてしまう。
そこで奇跡が起きる。
サムはゴーストになり、モリーから彼の姿は見えず、
またコミュニケーションもできないが、彼女の毎日をそばから見守る。
やがてあの暴漢が彼女を再び狙っていると知り、
サムは霊媒師オダ・メイの協力を得て陰謀の黒幕を追う…
***
死者の世界にいるという圧倒的ハンデの中、
「犯人を捕まえ、恋人を守る」というスリリングなシチュエーションを
巧みに描いた128分のストーリー。
表向きは「死んでも君を守る!」を地でいくラブストーリーながら、
サスペンスやファンタジー、ホラー、コメディといった要素も含まれている、
エンターテインメント性の強い一作となっています。
その内容のおかげで、客層も広がったはずですし、
結果的に、アカデミー脚本賞を受賞するほど、
高い評価を受けることにもなりました。
その物語と同じくらいに、本作で重要なファクターとなっているのが、
ライチャス・ブラザーズが歌う主題歌「アンチェインド・メロディ」です。
誰もが一度は耳にしたことのある
"Oh~~my love, my darling~"というメロディ。
でもじつはこの曲、別の映画のために作られていたことを
みなさんご存知でしょうか?
僕も観たことはないのですが、『Unchained』
という刑務所が舞台の作品用に制作されたのだそう。
でも歌詞を見ると、"君の愛が必要だ""君に触れたい"と
遠く離れた恋人に愛を訴えかける言葉が続き、
まるで『ゴースト/ニューヨークの幻』のために作られたとしか思えないほど、
歌詞と物語が密接にリンクしているのです。
そして、メロディーが映画全体のトーンを作り上げている。
もはや、この作品においての「アンチェインド・メロディ」は、
『バグダッド・カフェ』で言うところの「コーリング・ユー」、
『ニュー・シネマ・パラダイス』の「愛のテーマ」と
同じ意味合いを持っている、といっても過言ではないでしょう。
最後に。
本作が作られた1990年は、
ラブストーリーの名作『プリティ・ウーマン』も公開されていて、
全世界の興行収入でも、1位が『ゴースト/ニューヨークの幻』で、
3位が『プリティ・ウーマン』と、ともにメガヒットを記録するほど話題となりました
(2位は『ホーム・アローン』!)
そして、その『プリティ・ウーマン』の主演ジュリア・ロバーツは、
『ゴースト/ニューヨークの幻』でデミ・ムーアが演じた
モリー役のオーディションを受けていたのだそう。
でも年齢的に「まだ若い」と判断され、あえなく落選。
しかし、そのおかげもあって、
『プリティ・ウーマン』で一躍トップスターの仲間入りを果たすことになったのです。
人生って本当におもしろい。
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『ゴースト/ニューヨークの幻 デジタル・リマスター版』
Blu-ray 1,886円+税
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2021年3月の情報です。
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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