キノ・イグルーの週末シネマ​ no.115
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天使のくれた時間|Y字路でどこを見る?選び取る人生

文:キノ・イグルー 有坂塁

天使のくれた時間|監督:ブレット・ラトナー(2000年・アメリカ)

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2019年08月30日作成



何時に起きよう、何を着よう、何を食べよう。

ぼくたちの日々は、選択の連続で出来ています。


会話の中でも、どんな話をしようか、どの言葉で伝えようかと、

一瞬のうちにさまざまな判断を下しながら、

コミュニケーションをとっている。


このように日常的におこなえている"選択"という行為は、

こと就職や結婚という大きめの話になってくると、

途端に消極的な自分が顔を出し、モヤモヤしてきます。

失敗したくない、傷つきたくないと保守的になり、

慎重になりすぎてしまう。

やってみないと、わからないのに。

そして、結果的に思い通りにいかないと、ショックな気持ちとともに、

こう考えてしまうのです。


「もし別の選択をしていたら?」


この誰もが考えたことのある問いを疑似体験させてくれる映画こそが、

ニコラス・ケイジ主演のファンタジードラマ『天使のくれた時間』です。

観てみたくないですか?もうひとつの人生。


***


恋人ケイトと別れて、ウォール街で成功をおさめたジャックは、

ある日不思議な青年に"もう一つの人生"に導かれる。

それは、ケイトと結婚し、タイヤのセールスをしながら

ふたりの子供を養う"ファミリーマン"としての生活だった。

戸惑いながらも、自分を見つめ直す機会を得たジャックは

13年間忘れていた愛こそが、人生を豊かにするするものだと気付いていく。

そして、再び"現実"に戻ったとき、ジャックのとった行動は…


***


もしも、あのとき別れていなかったらふたりはどうなっていたのか。

結婚してた?幸せになれた?

これって誰もが一度は通ってきた悩みだと思います。


本作は、そんな普遍的とも言える感情を縦軸に、

タイムスリップするトリッキーな構成を横軸に、

そしてそれらを大きく包み込むのが

ニコラス・ケイジとティア・レオーニの素晴らしい演技なのです。

地味なコンビだねー、なんて言わないように!笑


このふたりの安定した演技と存在感があってこそ、

夢のようなファンタジーをリアルなものとして楽しむことができるのです。

イケメンスターがさらっと演じるのとは、説得力が違います。


そして最大の見どころは、余韻たっぷりなラストシーン。

ここを大げさにやりすぎてしまうと、

ひとつひとつ丁寧に積み上げてきた時間が台無しになってしまいます。

ではいったいどんなクライマックスを迎えたのか?

それは観てからのお楽しみです。


この映画の存在が、

今後のあなたの人生で出会う様々な"決断"の一助になることを期待して、

今年の夏のエッセイは終わりたいと思います。

もうすぐ秋ですね。

今月もありがとうございました。


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『天使のくれた時間』
Blu-ray 2,000円(税抜)
発売中
発売・販売元:ギャガ
© Beacon Communications LLC

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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