人気が高い"食と映画"のコラボレーション。
キノ・イグルーでも、これまでに数々のイベントを開催してきています。
『アメリ』×クレームブリュレ
『かもめ食堂』×シナモンロール
『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』×キューバサンド
こんな定番企画はもちろんのこと、
シェフが"映画の世界"をイメージした料理をみんなに振る舞う映画祭から、
砂糖・塩・醤油などの調味料に合わせた短編映画を一口フードとともに鑑賞してもらう企画まで、
幅広い内容で開催してきています。
中でも印象的だったのが、五感を使った映画イベント。
オープンキッチンのある空間で、映画上映をしながら、
調理の"音"や"匂い"までも楽しんでもらおうという企画。
リズミカルな包丁の音。
ステーキを焼くときのジューっというサウンド。
炊き立てのごはんの匂い。
食材の旨味が詰まった豚汁の湯気。
そんなあらゆる食の気配が、上映中の空間を漂うという、
"食"の4D上映のようなイベントでした。
このときは『南極料理人』を上映したのですが、
じつは最後まで悩んでいた映画こそが、
『eatrip(イートリップ)』だったのです。
はらぺこたちの食欲を刺激するおいしい映画。
こちらはフィクションではなく、
食にまつわるドキュメンタリー作品となっています。
内容は、こんな感じ。
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フードディレクターの野村友里が、
沖縄やんばるで自給自足をめざす主婦をはじめ、
俳優・浅野忠信さんの初めての「お茶会」、
歌手UAさんが自然体で向き合う「食」と「こども」のこと、
築地市場の「今」、
池上本門寺ご住職の「生き生き生きること」と「食」について、
など、複雑な時代にシンプルに生きる人たちの「食」との向き合い方や
「生き方」「食の記憶」などを辿っていくドキュメンタリー作品。
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フードクリエイティブ・チーム「eatrip」の主宰で、
食を生業とする野村友里が映画監督に初挑戦!
ということでも話題になった一作。
人と食のつながりや、言葉には表現しきれない空気感や
流れる時間をピュアに描いた映像エッセイのような作品です。
彼女は、映画という表現方法をとるに当たり、
「自分なりの視点を伝える以上、責任が生じるし、趣味の延長では失礼」
と考えたのだそう。
結果、料理やキッチン、ダイニング、登場人物に至るまで、
その想いは行き届き、彼女の美意識に溢れた美しい作品となりました。
特に、映像と音へのこだわりは素晴らしく。
手触り感を重視するため、映像は16ミリフィルムを使用。
奥行きのあるフィルム的ルックに加え、
撮り直しが効かない緊張感のおかげで、
野村友里の持つ"洗練さ"がより際立ったように思えます。
一方、音は、あくまでさりげなく。
お鍋をグツグツと煮込む音や、
七輪で魚を焼くパチパチといった音など、
日常で耳にする料理の音を丁寧に拾いあげ、クリアな音で聴かせてくれます。
これがとにかく気持ちいいんです!
そしてとどめは、子どもたちの「いただきま〜す!」の声。
この元気いっぱいな声に合わせるかのように、
僕たちのお腹も、ぐーーっと鳴ってしまうのです。
そんな豊かな音にも耳を傾けつつ、
おいしい食のエッセイをお楽しみいただければと思います。
Enjoy!
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『eatrip』
DVD発売中 6,380円
発売・販売元:スタイルジャム
(C)2009スタイルジャム
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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