夏バテならぬ"秋バテ"という言葉があるんですね。
初めて知りました。
過酷な夏が過ぎ去ったのに疲れを引きずっている方、多いと思います。
それは夏の間に弱った体とメンタルが回復しきっていない証拠だそうで、
そこに気温の寒暖差も加わって、自律神経が乱れてしまっているとのこと。
となると、これはゆっくりと時間をかけて、
メンテナンスをするしかないわけです(僕の妻も、今この状況)
そういった意味で、今回のお題である
「なにかとお疲れ気味なあなたへ 美しい風景と穏やかな時間を」は、
この時期にぴったりな素晴らしい提案となっているのですね。
担当編集のWさん、さすがです。
僕が選んだ作品は、1984年のフランス映画『田舎の日曜日』。
カンヌ国際映画祭では監督賞を受賞し、
日本の毎日映画コンクールでも外国映画ベストワン賞に選出!
にも関わらず、歴史の中に埋もれてしまっている感の否めない
"隠れた名作"となっています。
まずは、こちらの内容からご確認ください。
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1912年、初秋のパリ郊外。
初老の風景画家ラドミラルは自然にとり囲まれた家に
家政婦のメルセデスと二人で住んでいる。
今日は日曜日。
いつものようにパリから息子ゴンザグが
嫁のマリーと3人の孫を連れてやって来る日だ。
息子夫婦が到着すると、
陽光を浴びて樹木が美しく輝く広い庭に子供たちの陽気な声がこだまする。
そこに不意に娘のイレーヌが立ち寄る。
イレーヌはラドミラル自慢の娘で、
好奇心に満ち、いつも恋をしていた。
ラドミラルを囲んだひさびさの家族の団らんの中で
田舎の日曜日が過ぎていく…
***
どうです、面白そうでしょ?
しかも、"初秋"の時期を描いているため、
秋のピクニックに向けても、気分が上がる一作となっています。
祖父の家に息子や孫が集まる、なんてことのない日曜日。
庭で昼寝をしたり、お茶をしたり、絵を描いたりと、
平凡だけれど、とても幸せな時間が流れています。
そしてどの場面を切り取っても、
淡い水彩画のような風景が画面いっぱいに広がり、
それはさながら、動くルノワールのよう。眼福の極みです。
そこに寄り添うガブリエル・フォーレの室内楽も、
秋の陽だまりのような落ち着いた感覚で、映画全体を包み込んでくれます。
田舎の豪邸で一人暮らしをするおじいちゃんは、
みんながやってくる日は朝からソワソワし、待ち遠しくて駅まで迎えに行きます。
本作は、そういった「わかるわかる」という
共感エピソードの連続で成り立っています。
なので、若者には刺激が足りないかもしれませんが、
人生経験を重ねた人ほど、
しみじみと心に染み入る内容となっているのです。
(特に、静かな余韻を残すラストシーン)
まさに、究極の癒しの一作。
この時期にご紹介できたこともご縁だと思うので、
初秋の日曜日に、ご覧になってみてはいかがでしょうか。
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『田舎の日曜日』
DVD 5,280円(税込)
Blu-ray 6,380 (税込)
発売元:シネマクガフィン
販売元:紀伊國屋書店
©1984 STUDIOCANAL-France 2 Cinéma-Studio 37
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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