主人公に共感したいと思いながら、
ときに、その枠を大いにはみ出してしまうキャラクターに
惹きつけられてしまうことありませんか?
常識はずれ。理解不能。モラルが逸脱してる。
日常では決して出会いたくないそんな人物は、
映画の中で観ている分は、不思議と面白い。学びもある。
問題児たちの驚きの行動が、
凝り固まった思考をグンと広げるきっかけとなり、
ブレない姿を観ているだけでストレス解消にもなります。
おまけに、このような個性を受け止めるということは、
つまり"多様性"を認め合える社会にも繋がっていくわけです。
いいことだらけ!理解できないは、面白い!
今回ご紹介する『クルーレス』の主人公シェールも、相当に個性的です。
16歳ながら、超がつくほどの大金持ち。
おしゃれが大好きで、ダサいことが大嫌い。
そして、ちょっぴりおせっかいな女の子。
ストーリーはこんな感じとなっています。
***
美少女シェールの趣味は、センスの悪い誰かを変身させること。
先生同士をくっつけたり、
超ダサい転校生タイをセンスアップさせ、
クラスのリーダー、エルトンと結びつけようとしたりする。
シェールの元義兄のジョシュは、そんな彼女を密かに愛し、心配していた。
そうとも知らず彼女はクールな転校生クリスチャンに夢中になるが、
何と彼はゲイだった。
シェールは「もしかしてあたしが一番クルーレス(=ダサい)なの!?」
と悩み始める。
***
アメリカの高級住宅地ビバリーヒルズに住むシェールの関心ごとは、
とにかくおしゃれをすること。
通学をするにも、ワードローブいっぱいのブランド服からコーディネート。
映画全体がまるで大きなファッションショーかのように、
シーンごとに洋服が変わっていき、目を楽しませてくれます。
そんな彼女のクローゼットは自動型、くるくると回転します。
レッド、グリーン、柄物など、色やタイプごとに分けられていて、
PCを使って洋服の組み合わせを選ぶことまでできるというこだわりようです。
もう、開いた口が塞がりません。
(キナリノ読者のみなさんとはファッションの好みが違うかなとは思いますが… 笑)
なんでも自分流にかわいくアレンジすることが大好きなシェールは、
ついに自分だけでなく、見た目に無頓着なクラスメートを
プロデュースしていくこととなります。
もう、ここまで振り切れていると、お金の使い方も含めて、
清々しささえ感じてくるのだから面白いです。
主演のアリシア・シルヴァーストーンの自信に満ちあふれたキュートな笑顔と、
ときどき見せるいたずらっぽい表情は、
男女問わず、観る人の心を一瞬にして射抜いてしまう、
まさに一世一代のハマり役。ぜひ観てください。
それに加えて本作は、
ジェーン・オースティンの「エマ」を下敷きにしているため、
学園モノにありがちなスクールカーストや、イヤミな先生など、
悪意のある人間が出てこないところがまたいいんです。
小・中・高校生の娘さんがいる方は、ご一緒にぜひ。
きっとシェールに影響を受け、
ファッションの楽しさそのものに目覚めてしまうはずです。
でも、お金の使い方にはくれぐれも注意を。
************************************************
『クルーレス(TM) スペシャル・コレクターズ・エディション』
DVD 3,980円+税
発売中
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2020年7月の情報です。
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
Instagram Web Site