キノ・イグルーの週末シネマ​ no.149
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バック・トゥ・ザ・フューチャー|未来の楽しみはほとんど80年代SFから教わった

文:キノ・イグルー 有坂塁

バック・トゥ・ザ・フューチャー|監督:ロバート・ゼメキス(1985年・アメリカ)

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2020年04月24日作成



『ブレードランナー』、『E.T.』

『ネバーエンディング・ストーリー』、『ニューヨーク東8番街の奇跡』…

80年代は、ワクワクするSF映画の宝庫です。


なぜか?

それは、70年代のアメリカ社会を検証してみると、うっすら見えてきます。

ちょっとおもしろいので、お話しますね。


この時代のアメリカは、ウォーターゲート事件(1974年8月)や、

長期化したベトナム戦争(1975年4月終戦)の影響で、

社会全体が疲れ切っていました。

夢もへったくれもなく、みんなが現実と戦っていた。


そんなフラストレーションだらけの中、映画館で上映されていたのは、

スタジオやセットで作られていた夢と希望に溢れたハリウッド映画でした。

しかし、余裕のない人たちには、どうにも嘘っぽく映ってしまったようで、

映画界はやがて求心力を失っていきます。


そこに彗星のごとく現れたのが、

社会や体制に反抗的な若者を描いたアメリカン・ニューシネマの作品群です。

『イージー・ライダー』や『俺たちに明日はない』など、

ほとんどの作品は救いのない"バッドエンド"で終わってしまうにも関わらず、

若者たちからは圧倒的に支持され、一大ムーブメントに。

生々しさもふくめたリアルな表現が、彼らの心を掴んだようです。


しかし70年代も後半になると、

さすがにニューシネマ疲れが見え始めます。

そこに!

そこに!


ドッカーーン!!っとビッグインパクトを持って登場したのが、

かの『スター・ウォーズ』だったのです。

希望の見えないニューシネマから、宇宙を舞台にした大エンターテイメントへ。

そのインパクトは、相当なものだったでしょう。

『スター・ウォーズ』はノーフューチャーだったアメリカ国民に、

もう一度、夢を見ることの大切さを教えてくれたという意味でも

画期的な作品だったわけです。


そこから1980年代にかけて、映画はエンターテイメント色が一気に強まり、

"未来"を描いたSF映画も激増することとなります。

中でも「フューチャー現象」と呼ばれるブームが起こった

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は、この時代を代表する特別な1本です。


説明不要かもしれませんが、一応、内容を紹介しますね。


***


1985年、カリフォルニア州ヒル・バレー。

マーティ・マクフライは、"ドク"ブラウン博士が開発した

デロリアン型タイムマシンの実験を手伝っていた。

だがそこに、マシンの燃料であるプルトニウムをドクからだまし取られた

リビアの過激派が現れた。

ドクは彼らの凶弾に倒れ、

マーティはとっさにタイムマシンを運転して逃走するが、

誤って30年前の1955年にタイムスリップしてしまう―


***


早いもので公開から35年が経ちましたが、

もはや"タイムトラベル映画の古典!"と言い切っていいほど、

高い評価を受けている本作。


主演のマイケル・J・フォックスのコミカルな魅力もさることながら、

時間軸を行ったり来たりしながらもストーリー展開はわかりやすいし、

スピード感もある。


おまけに、BMXやスケボー、ロックなど、

真似したくなるようなポップカルチャー要素も強い上に、

タイムマシンとなるデロリアンもカッコいい!

物語だけでなく、ディテールにまでこだわり抜いているからこそ、

幅広いファンを獲得することが出来たのです。


果たしていま、ここまでスカッと爽やかな感動と勇気を与えてくれる作品なんて

存在するでしょうか。ワクワク感が止まらないー!みたいな。

誰もがこういう純粋さを求めているのに、一向に作られないという不思議。


映画は、時代を映す鏡です。

きっと、コロナ収束後、『スター・ウォーズ』や

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のように

未来を明るく照らしてくれる映画のムーブメントが起こるに違いありません。


そのためにも、今を、がんばりましょう。


世界中の映画を心で感じながら。


************************************************
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』
Blu-ray 1,886円+税
DVD 1,429円+税
発売中
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2020年4月の情報です。

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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