いまさら気がつきましたが、
地上波、BS、CS、どこもかしこも旅番組ばかりですね。
いつの間に、ここまで増えたのでしょう。
王道の「世界ふしぎ発見!」は、いまだ健在。今年で34年目。
一大人気ジャンルとなった"散歩もの"は、
「モヤモヤさまぁ~ず2」、「鶴瓶の家族に乾杯」
「有吉くんの正直さんぽ」といずれも魅力的。
ぼくも大好きな番組ばかりです。
「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」などのバラエティもの、
旅×ドキュメントな「アナザースカイ」、
実験的な旅番組「バカリズムの30分ワンカット紀行」など、
表現の幅は拡張され、旅番組はすっかり人気コンテンツのひとつとなりました。
もちろん、映画だって負けてはいません。
『パリ、テキサス』『リトル・ミス・サンシャイン』
『グリーンブック』といった"ロードムービー"には
星の数ほどのマスターピースがありますし、
"離島もの"だって、アラン・ドロンの名作『冒険者たち』や、
トム・ハンクス主演『キャスト・アウェイ』など、
数多くのオススメが存在しています。
その中から、今回は日本の映画をお届け!
那覇からフェリーで2時間、
沖縄の粟国(あぐに)島を舞台にした『ナビィの恋』。
主演は、西田尚美と村上淳、
後ほどご紹介する、沖縄の偉大なおふたりとなります。
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都会の生活に疲れ、沖縄の小さな島・泡国島に里帰りした奈々子。
陽気な島民や祖父母である恵達おじぃとナビィおばぁに温かく迎えられ、
奈々子の心は次第に癒されていった。
だがしばらくすると、奈々子はナビィの様子がおかしいことに気づく。
実は、60年前に引き裂かれた
大恋愛の相手・サンラーが秘かに島に帰っていたのだ!!
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素敵な関係のおじぃとおばぁ。
ふたりはベラベラと喋らずに、短い言葉で互いを理解し合います。
たくさんの困難を一緒に乗り越えて来たんだろうなあ、
という歴史の厚みのようなものを感じる。
おじぃを演じるのは、沖縄民謡の大家・登川誠仁。
恵達の、歌と下ネタが好きな飄々としたキャラクターは、
誰もが虜になってしまうこと間違いなし。
役者じゃない人が演技をすると、ときどきものすごく味が出ますが、
恵達はまさにそれ。
ナビィを演じるのは、沖縄芝居のベテラン女優・平良とみ。
2001年のNHK「ちゅらさん」で全国区の人気者となり、
"おばぁ"の愛称で親しまれましたが、
彼女のブレイク作が何を隠そう『ナビィの恋』だったのです。
好きになった男のことは歳をとっても忘れないという女性の心理を、
人間くさく、チャーミングに演じています。
温かくて優しくて、切ない。
この切なさが、物語に深みを生み出している。
だからこそ、21年という時を経てもなお、
幅広い世代に愛される作品になったのだと思います。
もうひとつの魅力は、旅気分が味わえる、粟国島のランドスケープ!
大きな大きな空、手つかずに広がるワイルドな大自然、
開け放たれた民家、庭いっぱいに咲くブーゲンビリア。
そこかしこに、島人たちの生活が垣間みられて、
風景を見ているだけでワクワクします。
観光スポットじゃないところがいいんだよなぁ。映画ならではです。
さらにさらに、じつは本作、
沖縄の最高の"音楽映画"でもあるのだから、もう言うことなし!
こちらの詳細は、観てからのお楽しみ!ということでお願いします。
めちゃくちゃカッコいいですよ。
笑えて、泣けて、ほっとする。
ウチナーミュージカルをご堪能あれ!
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『ナビィの恋』
Blu-ray 4,800円+税
発売・販売元:バンダイナムコアーツ
©1999オフィス・シロウズ/バンダイビジュアル
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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