キノ・イグルーの週末シネマ​ no.21
Dolls|あらためて誇りに思う美しい日本を知のカバー画像

Dolls|あらためて誇りに思う美しい日本を知る

文:キノ・イグルー 有坂塁

Dolls|監督:北野武(2002年・日本)

2
2017年11月10日作成



日本の「美」と、映画。

真っ先に思いつくのは、2002年の北野武監督作品、

『Dolls ドールズ』です。


日本の四季と色彩美。そして文楽。

世界に誇れる日本の「伝統芸能」を、

北野武流のクリエイティヴとして昇華した1本。


3組の男女による究極の愛の物語を、

文楽の人形を模した人間が語るというところが、

まずおもしろい。


そして、最大の見どころといってもいいのが、

ファッションデザイナー山本耀司が担当した衣装です。


このふたりの関係性がとても興味深いので、

少々長いですが、

武さんの言葉を引用させていただこうと思います。


**


細かい打ち合わせはナシ。

「ヨウジさんにすべてお任せします」

って言って出てきたのがあの衣装。

ヤラレたって感じだね。


「秋の衣装ができました」ってんで衣装あわせにいったら

菅野美穂さんがあの真っ赤なドレスで出てきた。

椅子から飛びあがったよね。

鯉のぼりが出てきたのかと思ったもん。

ホームレスの衣装をお願いしたわけだからさ、

アディダスのジャージの擦り切れたヤツとか、

ボロボロのスカートとか予想してたわけだから。

背景は紅葉です、って伝えてあったし、

まさか赤に赤を持ってくるとは思わないじゃない。


でも、そこで腹をくくったというか。

もともと"人形が語る"っていうコンセプトだったのを、

もっとはっきり"人間が人形に操られている物語"に

すればいいわけだから。

衣装のおかげで「日本の四季」を舞台美術そのものだ、

っていうふうに撮ろうという方向性が決まった。


**


これぞ、理想的なコラボレーション。

世界のフィールドで活躍する二人が、

互いのクリエイティビティをぶつけ合って、

日本独自の「美」を表現する。

そこから生まれたのは、

非現実的で幻想的でおとぎ話のような、

残酷で純粋な愛の物語でした。


結果、海外では大好評。

特にロシアでは2年に及ぶロングランとなったのですが、

日本では興行的に振るわなかったのだそう。


それも残念な話です。

作品としてのクオリティは素晴らしいですし、

あらためて日本のことを誇りに思えるはず。

みんな大好きな西島秀俊さんも出演されています。

ぜひ、秋の夜長の1本としていかがでしょうか?


************************************************
『Dolls』
DVD 3,800円+税
Blu-ray 3,800+税
DVD&Blu-ray発売中
発売・販売元:バンダイナムコアーツ
北野武監督Blu-ray&DVDサイト
https://v-storage.bandaivisual.co.jp/sp-site/kitano/

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
Instagram    Web Site

バックナンバー

アプリ限定!
12星座占い、天気予報と気温に合わせたコーデをお楽しみいただけます

お買いものも
キナリノアプリで◎

キナリノアプリ

「これが好き」「これが心地よい」と感じてもらえるお買いもの体験と情報を。自分らしい暮らしがかなう、お買いものメディア

App Store バナーGoogle Play バナー