日本の「美」と、映画。
真っ先に思いつくのは、2002年の北野武監督作品、
『Dolls ドールズ』です。
日本の四季と色彩美。そして文楽。
世界に誇れる日本の「伝統芸能」を、
北野武流のクリエイティヴとして昇華した1本。
3組の男女による究極の愛の物語を、
文楽の人形を模した人間が語るというところが、
まずおもしろい。
そして、最大の見どころといってもいいのが、
ファッションデザイナー山本耀司が担当した衣装です。
このふたりの関係性がとても興味深いので、
少々長いですが、
武さんの言葉を引用させていただこうと思います。
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細かい打ち合わせはナシ。
「ヨウジさんにすべてお任せします」
って言って出てきたのがあの衣装。
ヤラレたって感じだね。
「秋の衣装ができました」ってんで衣装あわせにいったら
菅野美穂さんがあの真っ赤なドレスで出てきた。
椅子から飛びあがったよね。
鯉のぼりが出てきたのかと思ったもん。
ホームレスの衣装をお願いしたわけだからさ、
アディダスのジャージの擦り切れたヤツとか、
ボロボロのスカートとか予想してたわけだから。
背景は紅葉です、って伝えてあったし、
まさか赤に赤を持ってくるとは思わないじゃない。
でも、そこで腹をくくったというか。
もともと"人形が語る"っていうコンセプトだったのを、
もっとはっきり"人間が人形に操られている物語"に
すればいいわけだから。
衣装のおかげで「日本の四季」を舞台美術そのものだ、
っていうふうに撮ろうという方向性が決まった。
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これぞ、理想的なコラボレーション。
世界のフィールドで活躍する二人が、
互いのクリエイティビティをぶつけ合って、
日本独自の「美」を表現する。
そこから生まれたのは、
非現実的で幻想的でおとぎ話のような、
残酷で純粋な愛の物語でした。
結果、海外では大好評。
特にロシアでは2年に及ぶロングランとなったのですが、
日本では興行的に振るわなかったのだそう。
それも残念な話です。
作品としてのクオリティは素晴らしいですし、
あらためて日本のことを誇りに思えるはず。
みんな大好きな西島秀俊さんも出演されています。
ぜひ、秋の夜長の1本としていかがでしょうか?
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『Dolls』
DVD 3,800円+税
Blu-ray 3,800+税
DVD&Blu-ray発売中
発売・販売元:バンダイナムコアーツ
北野武監督Blu-ray&DVDサイト
https://v-storage.bandaivisual.co.jp/sp-site/kitano/
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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