昔の映画には、エンドロールがなく、
「THE END」が表示されたすぐあとに劇場の灯りが静かに灯るのです。
そのほうが潔くていいという人もいれば、
映画の余韻をじっくり味わいたい人もいます。
どちらにも良さはある。
また、ぼくのような上映者泣かせの作品もあって、
その代表格が、ちょうど12月12日に滋賀県のお寺で上映する
『フレンチ・カンカン』(1954) です。
この映画のラストは、何度観ても、嗚咽しそうになる怒涛のダンスシーン。
ここで感情をかき乱され、エンドロールなしで映画は終わり、
ぼくは半泣き状態のまま、作品解説をする羽目になるのです 笑
(その分 気持ちの入った解説が聞けますので、関西のみなさん、ぜひ!)
さて、今回ご紹介したいのは、
ジャッキー・チェン映画のNG集のように、
こだわりのあるエンドロール作品です。
オススメしたいものは数あれど、スペシャルと言ってもいい1本が、
ラッセル・クロウ主演の『ロビン・フッド』です。
この映画のエンドロールは、もはやアートの領域。
最初から最後まで震えるほどしびれる作りになっているのです。
まずは本編の内容からご確認ください。
***
12世紀末。
イングランド獅子心王リチャード1世が率いる十字軍遠征隊の中に、
数々の武勲を打ち立てた弓の名手、ロビン・ロングストライドがいた。
フランス軍との戦闘でリチャード1世が落命したと知ると
仲間とともに部隊を離れるが、
王の側近たちがフランス軍の闇討ちに合う現場に遭遇する。
そこで倒れていた瀕死の騎士ロバート・ロクスリーの遺言、
ノッティンガム領主の彼の父に剣を届ける約束を果たすため、
ロビンたちはノッティンガムへ向かう。
そこでは、彼の新たな人生が待ち受けていた…
***
中世イングランドの伝説上の人物、ロビン・フッド。
日本人にはあまり馴染みないモチーフですが、
ディズニーアニメも含めると、
何と10回以上も映画化されている人気コンテンツ。
今回のヴァージョンは、
アカデミー賞を総なめにした『グラディエーター』のコンビ、
リドリー・スコット監督とラッセル・クロウが手がけたこともあり、
過去最高のスペクタクル超大作となっています。
そんな本編も見どころ十分ですが、
それ以上に素晴らしいのが、デザイン的興奮に酔える"エンドロール"です。
手がけたのは、イタリアのアニメーション作家ジャンルイジ・トッカフォンド。
1998年にユナイテッドアローズの企業イメージ広告も担当していたので、
ご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
( 【心に歌を、身体に愛を】というアレです!)
まるで印象派の絵画がそのまま動き出したかのような素敵なアニメーション。
さっきまで観ていたダイナミックな映画の世界が、
今度は、アニメーションとして再現されます。
独特な色彩感覚。
そして、油絵のように上塗りを重ね、筆使いの力強さまで感じられる、
完璧なアートとしか言いようのない、至福の3分間。
その"絵"を紹介できないのがもどかしいですが、
クオリティーは保証しますので、必ず!ご覧になってみてください。
本編の世界を補強してくれるだけでなく、
純粋な視覚的快楽としてまで楽しめるところが、本当に驚きです。
2度、お得な作品。
ちなみにトッカフォンドは、
リドリー・スコットのプロダクション「スコット・フリー」のロゴも手がけているので、
本編前の時間にも、どうぞご注目を。
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『ロビン・フッド』
DVD 1,429円+税
Blu-ray 1,886円+税
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2020年12月の情報です。
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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