キノ・イグルーの週末シネマ​ no.220
リアリティ・バイツ|サントラを探したくなる!名シーンとシンクロする映画音のカバー画像

リアリティ・バイツ|サントラを探したくなる!名シーンとシンクロする映画音楽

文:キノ・イグルー 有坂塁

リアリティ・バイツ|監督:ベン・スティラー(1994年・アメリカ)

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2021年09月03日作成



"映画音楽"といったら、どんなタイトルが思い浮かぶでしょう?


僕と同世代の方なら、『フットルース』、

『グーニーズ』、『ネバーエンディング・ストーリー』といった

80年代の作品を思い浮かべるかもしれません。


この時代は、ちょっと特殊。

「MTV」の放送が開始され、音楽は"聴く"だけのものではなく、

映像と併せて"観る"楽しみが加わりました。

映画の名場面集のようなミュージックビデオがヘビロテされ、

瞬く間に、全米ヒットチャート1位を獲得。

相乗効果で映画まで大ヒットするという、

何とも幸福な時代だったのでした(メディアミックスの走りですね)。

この時代における映画音楽のキーワードは、"大ヒットテーマ曲"でした。


しかし90年代になると、風向きが変わります。

『ゴースト/ニューヨークの幻』『タイタニック』など80'sの名残を持った作品の一方で、

『トレインスポッティング』や『パルプ・フィクション』

『ヴァージン・スーサイズ』といった新しい風を感じる作品が生まれてきました。

映画音楽のキーワードは、ズバリ"選曲の妙"。

耳のいい監督が、各場面に合った音楽を自らチョイス。

古今東西、時代も飛び越えた個性的な選曲の数々は、

サントラの枠に収まりきらない上質なコンピレーションCDのよう。

これが、DJカルチャーが花開いた90年代的な"編集感覚"なのかもしれません。


そんな時代を象徴する傑作のひとつが、

ベン・スティラーの初監督作『リアリティ・バイツ』。

これは観たことがある方なら、ナットクしてくれるはず。

青春群像劇ながら、どこか音楽映画のような感触も併せ持った逸品で、

サントラも話題になりました!


まずはこちらのストーリーから、ご確認ください。


***


大学の卒業式で総代としてスピーチしたリレイナはTV局に就職してADになるが、

退屈な仕事にうんざりし、ある番組の司会とケンカをしたために失業してしまう。

一方、同じように失業してしまった男性の友人トロイは仲間のサミーを連れて、

リレイナとルームメイトのヴィッキーが住むアパートで居候するように。

トロイはリレイナを好きになるが、

リレイナはすでにMTVで働くマイケルに好意を抱くようになっていて…


***


本作の軸は、"ジェネレーションX"と呼ばれる

1961~81年生まれの若者たちの日常で、彼らの漠然とした未来に対する不安が、

この映画には通奏低音として響いています。


ウィノナ・ライダー演じるリレイナは、

大学の卒業式でこのようなスピーチを披露します。


「今の若者は、たかがBMWを買うために週80時間も働いたりしません。

60年代に反体制やカルチャー革命を謳った人々は、

今や無心に毎朝ジョギングする始末。

では、現在の私たちはどう生きるべきか。

受け継いだ重荷をどうすべきか。

卒業生の皆さん、

答えはいたって簡単です。

その答えは……答えは……

I don't know!!」


これが映画の冒頭です。

「わかりません!!」から始まる物語。


こうなると、ジェネレーションX世代の "感覚そのもの"にウソっぽさが出てしまうと、

もはやアウト。映画は成立しません。


そこで直接、感覚へ訴えかける"音楽"が、とても重要になってくるわけです。

バシッといまを感じる絶妙な選曲。


劇中では、こんな楽曲が使用されました。

ザ・ナック「My Sharona」

ビッグ・マウンテン「Baby, I Love Your Way」

U2「All I Want Is You」

レニー・クラヴィッツ「Spinning Around Over」

ダイナソーJr.「Turnip Farm」

スクイーズ「Tempted」など。


懐かいロックから、レゲエ、オルタナロック、ポストパンク。

ジャンルはバラバラなのに、一貫性を感じる抜群のセンス。

中でも、素晴らしかったのが、

シンガーソングライターのリサ・ローブが歌う「Stay (I Missed You)」です。


爽やかな歌声と、みずみずしいフィーリング。

全米No.1に輝くほど大ヒットした曲ですが、

このサウンドトラックに起用されるまで、

リサ・ローブ自身はまったくの無名だったそう。


何でも彼女は、イーサン・ホーク主宰の劇団に所属していて、

映画のテーマにぴったりだからという理由で、

イーサンがベン・スティラーに紹介をし、サウンドトラックに収録されたのだとか。


そして、レコード会社との契約がないアーティストとしては

ビルボード史上初となる1位を獲得したのです!いい話!


そんな素敵な作品『リアリティ・バイツ』。

これから観られるみなさんが、本当にうらやましい!

この週末にでも、ご覧になってみてくださいね。


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『リアリティ・バイツ』
Blu-ray 2,075円(税込)
Blu-ray&DVD 発売中
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
©1994 UNIVERSAL CITY STUDIOS, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
※2021年9月の情報です。

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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