音楽の授業で習った歌や、CMのあの曲が、
じつは「映画音楽だったんだ!」という経験、
みなさんもありませんか?
僕は恥ずかしながら「ドレミの歌」がそうでした。
同じく授業で歌っていた「エーデルワイス」も、
"そうだ 京都、行こう。"のCM曲「My Favorite Things」も。
この3曲は、映画『サウンド・オブ・ミュージック』の劇中曲。
本作を初めて観たのが2006年だったので、
僕は31歳になるまでその元ネタを知らないまま生きていたことになります。
高田馬場にある名画座「早稲田松竹」で鑑賞しながら、
「この曲そうなのっ!えーっあの曲もー!」
なんて腰を抜かすほど驚き続け、
曲の美しさに涙したことを今でも覚えています。
そもそもミュージカル映画は、
心浮き立つ歌や、華やかな楽曲が多いので、
ポジティブなイメージを打ち出したいCMとの相性がいいのかもしれません。
(『ロシュフォールの恋人たち』も車のCMで使われ、
マイア・ヒラサワと槇原敬之による『雨に唄えば』をカバーしたCM曲などもありました)
それは最近で言うなら、
『グレイテスト・ショーマン』ということになるのでしょう。
パッと思いつくだけでも、
アサヒスーパードライのCMで「This Is Me」、
東京海上日動では「The Greatest Show」が使用され、
いずれも印象的なCMに仕上がっていました。
きっと僕と同じように今の小さい子たちも、
『グレイテスト・ショーマン』の本編を観てビックリするのでしょうね。
じつは私も「観たことないよー」という方のために、
まずは、こちらのストーリーからご紹介したいと思います。
***
19世紀半ばのアメリカ。
幼馴染の妻と子供たちを幸せにすることを願い、
挑戦と失敗を繰り返してきたP・T・バーナムは、
ついにオンリーワンの個性を持つ人々を集めたショーをヒットさせ、
成功をつかむ。
しかし、彼の型破りなショーには反対派もいた。
若き相棒のフィリップをパートナーとして迎え、
彼の協力によりイギリスのヴィクトリア女王に謁見するチャンスを得たバーナムは、
そこで美貌のオペラ歌手ジェニー・リンドと出会う。
彼女のアメリカ公演を成功させ、
一流のプロモーターとして世間から認められようとするバーナムだったが…
***
この主人公は、実在した興行師P・T・バーナムがモデルとなっています。
貧しい苦労人だった彼は、
唯一無二の個性を持った仲間とともに奇抜なショーを築き上げ、
高い評価を受けながらも、社会の偏見や差別にさらされて悪戦苦闘します。
そんなハリウッドらしい前向きなストーリー自体を、
ミュージカル・エンターテイメントという"フレーム"を使って表現した点が、
本作の素晴らしいところかなと思っています。
というのも、
日常にはない"サプライズ"の連続で観客を楽しませようとする興行師のお話のため、
普通のセリフではなく"歌と踊り"で表現することに何の違和感も感じません。
他のミュージカル以上に、自然と感情移入することができますし、
映画ならではの驚異的ビジュアルで表現もできる。
もはや今となっては、
"グレイテスト・ショーマン"の人生を描くにはミュージカルしかないでしょ!
と思えるほど、自然な選択だったなと。
そのキーになってくる音楽を手がけたのが、
現代のアメリカ映画を代表する作曲家チーム"パセク&ポール"。
彼らが作品を彩るサウンドは、とても現代的かつキャッチーです。
劇中の動きに合わせた音作りや、セリフを兼ねた歌の掛け合い、
感動的なデュエット・ソング、ダンサンブルな打ち込みも多用し、
現代のポップ・ミュージックとして通用する曲作りを、
映画の世界に馴染ませることに成功しています。
だからこそ、ミュージカル好きの枠に収まることなく
世界的な大ヒットへ繋がっていったのでしょう。
そんなパセク&ポールは、同時期に公開されていた
あの『ラ・ラ・ランド』の音楽まで手がけているのだから驚きます。
まさに天才。
この機会にぜひ覚えてくださいね、
パセク&ポール。
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『プグレイテスト・ショーマン』
ディズニープラスで配信中
© 2022 Twentieth Century Fox Film Corporation
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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