2017年春からスタートした「キノ・イグルーの週末シネマ」。
今宵、最終回を迎えました。
足かけ5年半、一度も穴を開けずに無事完走。
原稿本数は、トータル289本でした。
週に一回の原稿を、
日々の業務(イベント運営、企画立案、打ち合わせ、事務作業)と
映画鑑賞と並行して書き続けることは簡単なことではありませんでしたが、
それはオファーをいただいた時からわかっていたこと。
渋谷のカフェ・ドゥ・マゴで編集長、
スタッフの方とお会いしたときに、
「修行だと思ってお受けします」と覚悟を決めたことを
昨日のように覚えています。
「キナリノ」というライフスタイル寄りのメディアで、
映画情報を定期的にお届けできる。
それは"映画のある生活"をスローガンとして掲げるキノ・イグルーにとっては、
願ってもないチャンスでした。
「やっぱり映画っていいなぁ〜」と思ってもらえるよう、
知識だけでなく、熱量も込めて書いてきたつもりですが、いかがだったでしょうか。
そしてこの5年半、イベントなどでみなさんにお会いしたときに、
「キナリノ、毎週楽しみにしています!」という声には、
とっても励まされました。とっても。
ということで、そんなみなさんへ感謝を捧げるべく、
ラストは、思い入れの強い『ミツバチのささやき』をご紹介しようと思います。
巨匠ビクトル・エリセ監督による永遠の名作。
まずは内容からご確認ください。
***
スペインのある小さな村に『フランケンシュタイン』の巡回上映がやってくる。
6歳の少女アナはスクリーン上の怪物を精霊と思い、
姉から怪物は村外れの一軒家に隠れていると聞いたアナは、
ある日、その家を訪れる。
そこで一人のスペイン内戦で傷ついた負傷兵と出会い…
***
という、シンプルな設定の映画『ミツバチのささやき』。
もしオールタイムベストを1本選べと言われたら、
マレーシア映画『タレンタイム』、
アキ・カウリスマキ監督『浮き雲』と並んで、
必ずベスト候補に上がってくる特別な1作になります。
出会いは、僕がまだ映画を好きになりたてな20代前半の頃、
いまは無き名画座での2本立て上映でした。
起承転結のはっきりしたハリウッド映画しか知らなかった当時の僕には、
ゆったり流れる時間感覚や画面構成、役者の存在感など、同じ映画とは思えない衝撃がありました。
言い換えるなら"詩的な感性"そのものを
この映画が教えてくれたと言っても過言ではありません。
絵画のような美しい映像。自然光の心地よさ。セリフのない長廻し。
純真無垢な少女を演じたアナ・トレントの大きな瞳。
"詩"をそのまま映画化したような趣深い作品で、
アメリカ映画とは対照的な静かな美しさがそこにはありました。
"余韻と余白"を大切にしながら生きている方、必見。
また、同じビクトル・エリセ監督が10年後に作った
『エル・スール』もご覧になっていただけると、
スペインが産んだ巨匠による唯一無二の世界観の虜になってしまうはずなので、
ぜひとも、合わせて楽しんでみてください。
これから観られるなんて、本当にうらやましい!
僕からの最後のオススメ作品は、『ミツバチのささやき』でした。
今まで本当にありがとうございました。
これまでの記事は、閲覧可能な状態でサイトに残る予定なので、
ぜひ、みなさんの映画ライフにお役立てくださいね。
5年半、楽しかったです。
またどこかでお会いしましょう!
映画が好きな、みんなが好き!
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『ミツバチのささやき』
Blu-ray¥5,280(税込)
DVD¥4,180(税込)
発売元:アイ・ヴィー・シー
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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