昨年の緊急事態宣言の直前に、
東京で雪が降ったことをみなさん覚えているでしょうか?
フォトライブラリーで調べると、2020年3月27日。
前週の3連休のときに、街は多くの人で賑わい、花見を楽しみ、
その影響もあってステイホームとなってしまったあの週末です。
近所の井の頭公園へ行ってみると、そこには満開の桜と雪景色が。
地球温暖化の影響とはいえ、
思いがけない春と冬のコラボレーションに心ときめいてしまったのは、
きっと、ぼくだけではないはず。
と同時に、その光景から
ティム・バートン×ジョニー・デップの記念碑的作品『シザーハンズ』を思い出してもいました。
そのロマンティックな風景に反応し、
あのパステルカラーの街並みと感動的な雪のシーンが、
フラッシュバックのように頭をよぎったのです。
30年以上も前の作品ですが、
今もなお「多くの人に観てもらいたい!」と純粋に思える、
哀しくも美しいラブストーリー。
まずは、ストーリーからご紹介したいと思います。
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丘の上の広い屋敷に年老いた発明家が住んでいた。
彼はたった一人で人造人間エドワードを作っていたが、完成間近に急死。
エドワードはハサミの手のまま取り残されてしまった。
化粧品のセールスで屋敷を訪れたペグは気の毒に思い、彼を家に連れて帰る。
エドワードはそこでペグの娘のキムに恋をしてしまうのだが…
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純真無垢な心を持つ人造人間と少女の交流を、
ティム・バートンはパステルカラーを中心に、
絵本のような世界観で観るものを楽しませてくれます。
ひと言でいうなら "甘く切ない現代のおとぎ話"といったとこでしょうか。
その中にあって、本稿のお題である"雪"はとても重要な位置を占めていて、
それは、映画会社のロゴを見るだけで一目瞭然。
誰もが目にしたことのある、あの「20世紀フォックス」の立体ロゴが、
カラーではなくモノクロに。そこには、シンシンと雪が降り積もっています。
さらに、いつもの高らかなファンファーレではなく、
心洗われる音楽が静かに流れている…
何かが始まる予感に満ちた、素敵なオープニング。
不思議な気持ちのまま、映画は始まり、
そして、物語はこのように幕を開けます。
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寒い冬の夜。孫娘がおばあちゃんに質問します。
「雪はどうして降るの?」と・・・
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そんな本作の中でも一番の見どころは、
エドワードがキムのために氷の彫刻を作り、
雪を降らせ、キムが踊るという美しい場面。
映画史上、最も"雪"をファンタジックに使った名シーン!
と言いたくなるほど、純度が高く、
もはや、涙なしでは観ることが出来ません。
そんな雪ではじまり、雪でおわる映画『シザーハンズ』。
強い寒気に見舞われるという今週末に観るには、
グッドタイミングな一作かと思います。
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『シザーハンズ<特別編>』
DVD 1,419円+税
ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2012 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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