キノ・イグルーの週末シネマ​ no.18
突然炎のごとく|無彩色だから分かることモノクロ映画の魅のカバー画像

突然炎のごとく|無彩色だから分かることモノクロ映画の魅力

文:キノ・イグルー 有坂塁

突然炎のごとく|監督:フランソワ・トリュフォー(1962年・フランス)

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2017年10月20日作成



当たり前のことを言ってみます。

人間は"モノクロ"で世界を見ることが出来ません。

生まれた時から、世界はカラーです。


大げさなことを言ってみます。

ならば"モノクロ"映画というのは、

それだけでファンタジー作品なんじゃないかと。



モノクロ映画は、人を思考に導いてくれます。

画面の余白を、想像力で埋め、作品を完成させる。


対してカラー映画は、情報過多。

見る者に、これでもかと情報を差し出してしまうため、

考える暇を与えてもらえない。


と言っても、これはもちろん、

大げさに考えればの話です。


***


「1930年代。パリ・モンパルナスで

意気投合した2人の文学青年、ジュールとジム。

突然現れたカトリーヌに魅かれる2人だが、

先にプロポーズしたのは、ドイツ人のジュール。

彼はカトリーヌと結婚し、ドイツに連れて行くが、

戦争が起こり、2人の青年は敵味方となる。

戦後、ジムはライン川河畔に住む、ジュールを訪ね、

女の子を設けた。幸せな生活に見えた。

しかし、ジュールは、ジムにカトリーヌと

一緒になって欲しいと告げる…」


***


ぼくが愛してやまない、

モノクロ映画のひとつ『突然炎のごとく』。

監督は、ヌーヴェルヴァーグの旗手と呼ばれた

フランソワ・トリュフォー。

主人公カトリーヌを演じたのは、

先日死去した大スター、ジャンヌ・モロー。



彼女のコケティッシュな微笑み

セーヌ河畔の古い水車小屋

自転車で坂道を駆け下りるシーン

ギターに合わせて「つむじ風」を歌うシーン

カトリーヌがセーヌ川に飛び込むシーン

男装して3人で鉄橋を競争するシーン



もしこれらがカラーで撮られていたとしたら、

あれほど詩情豊かなシーンにはなっていなかったでしょう。

おそらく、もっと生々しい恋の話になっていたはず。


モノクロだからこそ本作は、

恋愛映画の枠を超え、

男と女の"神話"にまでなったのだと思います。


ぜひ一度、ご覧になってみてください。




P.S:トリュフォー曰く、

「ヒロインのカトリーヌは、自分の母親であり、

この映画は『大人は判ってくれない』で否定した、

母への許しだった」のだそう。

泣けるエピソードです。


************************************************
『突然炎のごとく』
Blu-ray 4,800円(税抜)
発売・販売元:KADOKAWA

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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