キノ・イグルーの週末シネマ​ no.61
歩いても 歩いても|帰省シーズン、しみじみと。家族っていいのカバー画像

歩いても 歩いても|帰省シーズン、しみじみと。家族っていいな

文:キノ・イグルー 有坂塁

歩いても 歩いても|原作・脚本・監督:是枝裕和(2007年・日本)

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2018年08月17日作成



一年に一回は、家族や親戚があつまって、

のんびり過ごす時間を作りたいものです。

お盆でも、お正月でも。


おいしいものを食べて、酒を呑んで、

昔のように笑い合いながら、他愛のない話をして。

それに飽きたら、適当に昼寝したり、TV見たり、猫と遊んだりすればいい。

よく考えたら、そういった何も決まっていない宙ぶらりんの時間は、

家族だからこそ許されるんですよね。


忙しくなるばかりの現代人の日常において

"余白の時間"は意識的に作り出していかないと、と最近強く思います。

心のバランスをとるためにも。


今回ご紹介する『歩いても 歩いても』は、

そんな"余白の時間"そのものを映画にしてしまったような大胆な一作。

だって、なんでもない日常を映画にするだけでもすごいのに、

是枝作品の中でNo.1なのでは!?というほど、

映画として面白いんですから…


***


夏の終わりに、横山良多は妻と息子を連れて実家を訪れた。

開業医だった父とそりのあわない良多は失業中のこともあり、

ひさびさの帰郷も気が重い。

明るい姉の一家も来て、横山家には久しぶりに笑い声が響く。

得意料理をつぎつぎにこしらえる母と、

相変わらず家長としての威厳にこだわる父。

ありふれた家族の風景だが、

今日は15年前に亡くなった横山家の長男の命日だった…


***


映画の中で流れる時間は、24時間ほどです。

そのゆっくりとしたときの流れが、とにかく心地いい。

同じ2時間を使って誰かの一生を描くハリウッド映画とは、

正反対の時間感覚になっています。

(もちろん、どちらがいいではなく、どちらもいい)


そうなると、日常生活のディテールが大事になってくる。

この映画では、ひさしぶりにこどもや孫を迎えた樹木希林さん演じる母が、

腕によりをかけた得意料理を数々披露してくれます。

大根のきんぴら、豚の角煮、枝豆とみょうがの混ぜ寿司…

中でも、とうもろこしのかき揚げのシーンは必見です。

とうもろこしの粒取りをするところも楽しそうだし、

それを手づかみで食べるところがまたいいんです。

観ているだけでお腹が空いてくる!


このような日常における"あるある"描写を是枝監督は丁寧に描くので、

観ているこちらの記憶も刺激されます。

ぼくはこの映画を観たあと、無性に家族に会いたくなりました。


もしこれを読んで「観たい!」と思った方は、早速、この週末にでもぜひ。

いつ観てもすばらしい作品ですが、

夏の終わりに出会えてよかった!と思えること間違いなしですので。

ああ、これから観られるなんて、うらやましい!


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『歩いても 歩いても』
DVD 3800円(税別)
発売中
発売・販売元:バンダイナムコアーツ
(C)2008「歩いても 歩いても」製作委員会

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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