レオさまは偉大なり。
そんなことを考えたのは、
クエンティン・タランティーノの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を
再見したから。
そう、レオさまとは、『大人は判ってくれない』のジャン=ピエール・レオーじゃなく、
レオナルド・ディカプリオのことです(そんなことわかってますよね)
『ワンハリ』での彼の役柄は、ちょっと落ち目のTV俳優。
ハリウッドで俳優としての輝きを取り戻そうと、もがき苦しむレオさま。
いい感じに枯れたオーラを纏い、哀愁さえ感じるその姿は、
様々な経験を重ねた"いま"のディカプリオだから演じられた役だと思われます。
役作りではどうにもならない"何か"が滲み出ている。
そうなると今度は、ディカプリオのキャリアが気になってきます。
過去作のほとんどはリアルタイムで観ているのものの、
あらためて俯瞰してみると、
彼の恐ろしいまでのスランプ知らずな一面が浮かび上がってくるのです。
ブレイクスルーとなった映画は、もちろん『タイタニック』。
レオさまと称されるきっかけにもなったメガヒット映画。
さらに、スピルバーグを始め、スコセッシ、イーストウッド、
ウディ・アレン、クリストファー・ノーランといった名匠との仕事や、
FBI長官エドガー・フーヴァー、詩人アルチュール・ランボー、
実在の大富豪ハワード・ヒューズなど、
アメリカを代表する偉人たちまでも演じていることがわかりました。
10代からキャリアを気づいた俳優は数多くいても、
そこから20年以上にわたって、ハリウッドの最前線で活躍し続けているのは、
もしかしたらディカプリオぐらいかも知れません。
(ブラッド・ピットやジョニー・デップは20代後半と遅咲き)
そんな彼の出世作は、代表作の1本と言ってもいい『ギルバート・グレイプ』。
この作品に関しては、いろいろお伝えしたいことがありますが、
まずは、物語からご確認ください。
***
アメリカのアイオワ州エンドーラ。
ギルバートはこの小さな町を出たことがない、24歳の青年。
夫亡き後、過食症で太って家にこもりっきりの母親、
知的障害者の弟アーニーら家族の面倒を見る一方、
ギルバートは人妻ベティとひそかに不倫の関係を続けているが、
くすぶった毎日に嫌気がさしていた。
ある日、祖母とキャンピングカーで旅を続ける少女ベッキーが
車の故障で町に滞在することに。
彼女と出会ったギルバートは心境に変化が生じて…
***
この話の中でレオさまは、
ジョニー・デップ演じるギルバートの弟アーニー役を演じています。
無垢で、自然体な存在感。
さらに喜怒哀楽をさらっと表現してしまう圧巻の演技力。
本当の知的障害者が演じていたと言われたら、
ほとんどの人が信じてしまうであろうほどに、
この映画のレオさまの演技は神がかっています。
完璧という言葉では足りないぐらいに惹きつけられ、
天才が現れた、と本気で思いました。
結果、この演技が足がかりとなり、
『バスケットボール・ダイアリーズ』、『太陽と月に背いて』、
『ロミオ+ジュリエット』という話題作を経て、
ついに4年後、『タイタニック』で大スターの仲間入りを果たすこととなるのです。
そんな無敵のディカプリオも、アカデミー賞だけは縁がありませんでした。
『ギルバート・グレイプ』の助演男優賞を始め、
トータル5回ノミネートされながら受賞できず。
「無冠の帝王」という嬉しくない称号まで得てしまっていたのですが、
初ノミネートから22年後、『レヴェナント:蘇えりし者』にて、
オスカーを初受賞することとなったのです、めでたし、めでたし。
それにしても……です。
いったい『ギルバート・グレイプ』のレオさまの代わりに、
誰がオスカーを受賞したのか。
みなさんも気になりますよね。
映画史に残るレベルの名演を超えた人とは誰なのか?
正解は、、、
『逃亡者』のトミー・リー・ジョーンズでした!
なるほどー。あの連邦保安官役も、確かに素晴らしかった!
だけど。
だけどなぁ……
そんなレオさまのフェイバリットムービーは、
なんと嬉しいことに『千と千尋の神隠し』だそうです。
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『ギルバート・グレイプ』
Blu-ray: ¥2,750(税抜価格¥2,500)
DVD:¥¥2,090(税抜価格¥1,900)
発売・販売:キングレコード
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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