キノ・イグルーの週末シネマ​ no.113
ディープ・ブルー|心を鎮めるブルーの世界に包まれのカバー画像

ディープ・ブルー|心を鎮めるブルーの世界に包まれて

文:キノ・イグルー 有坂塁

ディープ・ブルー|監督:アラステア・フォザーギル、アンディ・バイヤット(2003年・イギリス/ドイツ)

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2019年08月16日作成



映画セレクトのおもしろいポイント。

それは、作品の選び方が

対象メディアによって変わるというところがあります。


たとえば、今回のテーマ「ブルー」。

これが映画メディアからの依頼だったら、

ぼくは北野武の『ソナチネ』(1993) をあげていたでしょう。

映画全編のトーンを青みがかった色彩"キタノブルー"で統一。

キタノ映画から感じるクールな印象は、

この無意識レベルで感じとっている"青"の影響が大きいという話。


もしアート系のメディアなら、

迷うことなくデレク・ジャーマンの『BLUE ブルー』 (1993) をチョイス。

こちらはなんと、映画のすべてを青一色のみで構成するという超異色作。

ただ青い画面を眺めるだけなんです。

そこにほとんど盲目になってしまった監督本人のナレーションがかぶさるという、

悲痛なアートフィルムとなっています。


青でもいろいろ。


そして、今回わが「キナリノ」のために選んだ映画は『ディープ・ブルー』です。

誰もが行ってみたいと願う未知なる深海の世界を、

かつてないスケールで描いた海洋ドキュメンタリーとなっています。


***


ネイチャー・ドキュメンタリーの老舗、英国BBCの制作スタッフが、

7年もの歳月をかけて撮り上げた壮大な海のドキュメンタリー映画。

ロケ地は世界各国200か所にも及んだという。

鰯の群れを巡ってのイルカとサメ、カツオドリの激しい攻防戦。

シャチに狙われるコククジラの親子や、

深海の水域で自ら光を発する発光性動物をとらえた映像など、

これまで誰も観たことのない驚異のスペクタクルが楽しめる一作。


***


この映画に関しては、物語の余白を読み取るフィクションと違い、

映っているものがすべてです。

それ以上でもそれ以下でもない。

次から次へと繰り広げられる大迫力の映像を、

ジェットコースターに乗っているように楽しめばいいのです。


海岸で暮らすアシカの親子がいれば、その子を狙うシャチがいる。

やがてカメラは色とりどりの珊瑚礁群を通り抜け、

宇宙よりはるかに到達した人が少ないという、

海底5000メートルの真っ暗な深海へと進む…

どうです?これだけでも観てみたくなりますよね。


そして、このブルーばかりの世界に彩りを加えるのが、

初めて映画音楽を手がけたというベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。

彼らの流麗な音楽が、ブルーに包まれた世界に深みと奥行きを与えてくれ、

ぼくらはますます青の世界に魅了されてしまうというわけです。


そんな作品『ディープ・ブルー』ですが、

じつは同じタイトルで海洋パニック・アクションもあるので、

間違えないようにご注意ください。

とは言っても、

こちらはこちらで『ダイ・ハード2』のレニー・ハーリン監督作として、

めちゃくちゃ面白いのだけど。

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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