映画セレクトのおもしろいポイント。
それは、作品の選び方が
対象メディアによって変わるというところがあります。
たとえば、今回のテーマ「ブルー」。
これが映画メディアからの依頼だったら、
ぼくは北野武の『ソナチネ』(1993) をあげていたでしょう。
映画全編のトーンを青みがかった色彩"キタノブルー"で統一。
キタノ映画から感じるクールな印象は、
この無意識レベルで感じとっている"青"の影響が大きいという話。
もしアート系のメディアなら、
迷うことなくデレク・ジャーマンの『BLUE ブルー』 (1993) をチョイス。
こちらはなんと、映画のすべてを青一色のみで構成するという超異色作。
ただ青い画面を眺めるだけなんです。
そこにほとんど盲目になってしまった監督本人のナレーションがかぶさるという、
悲痛なアートフィルムとなっています。
青でもいろいろ。
そして、今回わが「キナリノ」のために選んだ映画は『ディープ・ブルー』です。
誰もが行ってみたいと願う未知なる深海の世界を、
かつてないスケールで描いた海洋ドキュメンタリーとなっています。
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ネイチャー・ドキュメンタリーの老舗、英国BBCの制作スタッフが、
7年もの歳月をかけて撮り上げた壮大な海のドキュメンタリー映画。
ロケ地は世界各国200か所にも及んだという。
鰯の群れを巡ってのイルカとサメ、カツオドリの激しい攻防戦。
シャチに狙われるコククジラの親子や、
深海の水域で自ら光を発する発光性動物をとらえた映像など、
これまで誰も観たことのない驚異のスペクタクルが楽しめる一作。
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この映画に関しては、物語の余白を読み取るフィクションと違い、
映っているものがすべてです。
それ以上でもそれ以下でもない。
次から次へと繰り広げられる大迫力の映像を、
ジェットコースターに乗っているように楽しめばいいのです。
海岸で暮らすアシカの親子がいれば、その子を狙うシャチがいる。
やがてカメラは色とりどりの珊瑚礁群を通り抜け、
宇宙よりはるかに到達した人が少ないという、
海底5000メートルの真っ暗な深海へと進む…
どうです?これだけでも観てみたくなりますよね。
そして、このブルーばかりの世界に彩りを加えるのが、
初めて映画音楽を手がけたというベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。
彼らの流麗な音楽が、ブルーに包まれた世界に深みと奥行きを与えてくれ、
ぼくらはますます青の世界に魅了されてしまうというわけです。
そんな作品『ディープ・ブルー』ですが、
じつは同じタイトルで海洋パニック・アクションもあるので、
間違えないようにご注意ください。
とは言っても、
こちらはこちらで『ダイ・ハード2』のレニー・ハーリン監督作として、
めちゃくちゃ面白いのだけど。
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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