キノ・イグルーの週末シネマ​ no.211
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エクス・マキナ|シンギュラリティは恐れるべき?人工知能にドキッとする映画

文:キノ・イグルー 有坂塁

エクス・マキナ|監督・脚本:アレックス・ガーランド(2014年・イギリス)

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2021年07月02日作成



初めて人工知能を意識したのは、

スティーヴン・スピルバーグ監督作『A.I.』を観たとき。


でも、あれってもう20年も前の作品なんですね。2001年作。


当時観たときは、人工知能という概念自体、

いまいちピンと来ていませんでしたが、

あっという間に身近な存在へと変化していました。


AIが人間の能力を超える日も近くなっているそうで。

人工知能研究の第一人者レイ・カーツワイル博士は、

「2029年にAIが人間並みの知能を備え、

2045年に技術的特異点(シンギュラリティ)が来る」と提唱されています。

人間以上の知性をもった"強いAI"が登場し、人間では予測不能な変化が起こる。

いわゆる、2045年問題です。


それによって人間の生活は、どれだけ大きな変わるのでしょうか。

SF映画の世界では、そんな未来がひと足早く描かれています。

スピルバーグは、愛のある未来を描きました。

人間よりも純粋に人を愛し続けるロボットを、

自身が愛してやまない「ピノキオ」の物語に重ねて。


スパイク・ジョーンズは、

携帯電話の音声アシスタントに恋心を抱いた男のラブストーリーを。

近未来のロサンゼルスを舞台にした、『her 世界でひとつの彼女』です。


そして、2014年。

問題作『エクス・マキナ』が登場しました。

人間と人工知能の主従関係を巡る心理戦を描いたSFスリラー。

スタイリッシュなビジュアルで、オスカーも受賞した注目の一作です。


まずは内容から、ご確認ください。


***


世界シェア率No.1の検索エンジンを運営するブルーブック社で

プログラマーとして働くケイレブは、

巨万の富を築きながらも普段は滅多に姿を現さないCEO.ネイサンが所有する

大自然の中の邸宅に、1週間滞在するチャンスを得る。

人里離れたその地に到着したケイレブ。

彼を待っていたのは、ネイサンが極秘に開発した

美しい女性型ロボット"エヴァ"に搭載された人工知能(AI)の

"チューリング・テスト"に協力するという、

興味深くも不可思議な実験だった…


***


"基本"ワンシチュエーションで、主要キャストは4人だけ。

じつは鑑賞前に、「SFらしくない密室劇だよ」と友人から聞いていたので、

ちょっと心配していました。

代わり映えのしない映像で退屈してしまうかな?と。


でも、そんな心配は稀有でした。

奥行きのある構図や、照明の当て方などを巧みに使った抜けのいい画面。その連続。

ワンシチュエーション映画にありがちな窮屈さを感じることは一切ありません。

(物語上、精神的には追い詰められますが…笑)


舞台となる、別荘がまた素敵で。

フィヨルドと山岳に挟まれた大自然に佇むモダンな建築物。

そこはヘリコプターでしか行くことができないのですが、

その壮大なランドスケープを切り取った空撮シーンは注目ポイントのひとつです。

めちゃくちゃカッコいい。

気になって調べてみると、ノルウェーに実在する

「ユーヴェ ランドスケープ ホテル」という建物を使用したのだそう。

これは、行ってみたい!


AIの話をしていませんでした。

不気味だけど、心惹かれる造形美。

異次元の美しさを持つ、女性型ロボット・エヴァは、

じわじわと、ケイレブの純心な心を蝕んでいきます。


『her 世界でひとつの彼女』を思わせる前半から、

後半は一変してスリリングな展開に。

隔絶された静謐の中で、人間の歪さ、不完全さがリアルに立ち上ってきてからの、

あのラスト…

正直、人工知能の恐ろしさに震える人も多いでしょう。


でもこれは、アレックス・ガーランド監督が思い描いた未来です。

愛のある未来を描いたスピルバーグや、

センス・オブ・ワンダーなスパイク・ジョーンズとは

思い描く未来像が異なるだけで、

2021年時点では、いずれの可能性だってあるわけです。


そんなことを心に留め、『エクス・マキナ』『A.I.』

『her 世界でひとつの彼女』の3作品を観てみるのはいかがでしょう?


2045年への心の準備として。


************************************************
『エクス・マキナ』
DVD 1,572円(税込)
DVD&Blu-ray 発売中
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2021年7月の情報です。

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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