初めて人工知能を意識したのは、
スティーヴン・スピルバーグ監督作『A.I.』を観たとき。
でも、あれってもう20年も前の作品なんですね。2001年作。
当時観たときは、人工知能という概念自体、
いまいちピンと来ていませんでしたが、
あっという間に身近な存在へと変化していました。
AIが人間の能力を超える日も近くなっているそうで。
人工知能研究の第一人者レイ・カーツワイル博士は、
「2029年にAIが人間並みの知能を備え、
2045年に技術的特異点(シンギュラリティ)が来る」と提唱されています。
人間以上の知性をもった"強いAI"が登場し、人間では予測不能な変化が起こる。
いわゆる、2045年問題です。
それによって人間の生活は、どれだけ大きな変わるのでしょうか。
SF映画の世界では、そんな未来がひと足早く描かれています。
スピルバーグは、愛のある未来を描きました。
人間よりも純粋に人を愛し続けるロボットを、
自身が愛してやまない「ピノキオ」の物語に重ねて。
スパイク・ジョーンズは、
携帯電話の音声アシスタントに恋心を抱いた男のラブストーリーを。
近未来のロサンゼルスを舞台にした、『her 世界でひとつの彼女』です。
そして、2014年。
問題作『エクス・マキナ』が登場しました。
人間と人工知能の主従関係を巡る心理戦を描いたSFスリラー。
スタイリッシュなビジュアルで、オスカーも受賞した注目の一作です。
まずは内容から、ご確認ください。
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世界シェア率No.1の検索エンジンを運営するブルーブック社で
プログラマーとして働くケイレブは、
巨万の富を築きながらも普段は滅多に姿を現さないCEO.ネイサンが所有する
大自然の中の邸宅に、1週間滞在するチャンスを得る。
人里離れたその地に到着したケイレブ。
彼を待っていたのは、ネイサンが極秘に開発した
美しい女性型ロボット"エヴァ"に搭載された人工知能(AI)の
"チューリング・テスト"に協力するという、
興味深くも不可思議な実験だった…
***
"基本"ワンシチュエーションで、主要キャストは4人だけ。
じつは鑑賞前に、「SFらしくない密室劇だよ」と友人から聞いていたので、
ちょっと心配していました。
代わり映えのしない映像で退屈してしまうかな?と。
でも、そんな心配は稀有でした。
奥行きのある構図や、照明の当て方などを巧みに使った抜けのいい画面。その連続。
ワンシチュエーション映画にありがちな窮屈さを感じることは一切ありません。
(物語上、精神的には追い詰められますが…笑)
舞台となる、別荘がまた素敵で。
フィヨルドと山岳に挟まれた大自然に佇むモダンな建築物。
そこはヘリコプターでしか行くことができないのですが、
その壮大なランドスケープを切り取った空撮シーンは注目ポイントのひとつです。
めちゃくちゃカッコいい。
気になって調べてみると、ノルウェーに実在する
「ユーヴェ ランドスケープ ホテル」という建物を使用したのだそう。
これは、行ってみたい!
AIの話をしていませんでした。
不気味だけど、心惹かれる造形美。
異次元の美しさを持つ、女性型ロボット・エヴァは、
じわじわと、ケイレブの純心な心を蝕んでいきます。
『her 世界でひとつの彼女』を思わせる前半から、
後半は一変してスリリングな展開に。
隔絶された静謐の中で、人間の歪さ、不完全さがリアルに立ち上ってきてからの、
あのラスト…
正直、人工知能の恐ろしさに震える人も多いでしょう。
でもこれは、アレックス・ガーランド監督が思い描いた未来です。
愛のある未来を描いたスピルバーグや、
センス・オブ・ワンダーなスパイク・ジョーンズとは
思い描く未来像が異なるだけで、
2021年時点では、いずれの可能性だってあるわけです。
そんなことを心に留め、『エクス・マキナ』『A.I.』
『her 世界でひとつの彼女』の3作品を観てみるのはいかがでしょう?
2045年への心の準備として。
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『エクス・マキナ』
DVD 1,572円(税込)
DVD&Blu-ray 発売中
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2021年7月の情報です。
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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