名物店主のお買い物日記 no.156
懐かしく美しい“菓子入れ”の話 ―東北スタンダードマーケット 岩井巽さのカバー画像

懐かしく美しい“菓子入れ”の話 ―東北スタンダードマーケット 岩井巽さん

キナリノモールに集うストアの個性的な店主たちが、自腹を切って買ったものや愛用品をひたすら語る、徒然お買い物リレー。今回は、昔はどの家庭にもあった懐かしい日用雑貨のお話。手仕事の足跡と、現代にも通ずるその魅力を、東北スタンダードマーケット・岩井さんがひもときます。

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2024年03月11日作成
岩井巽
東北スタンダードマーケット ディレクター
岩井巽
「伝統工芸品だけではなく、新たに生まれた東北のモノもいつか伝統になるように」という想いを原動力に、商品開発・デザイン・取材執筆・WEB制作など、百姓のように幅広く東北のものづくりに携わっています。ひっそりした喫茶店や古道具店が好きです。
懐かしく美しい“菓子入れ”の話 ―東北スタンダードマーケット 岩井巽さん
懐かしく美しい“菓子入れ”の話 ―東北スタンダードマーケット 岩井巽さん
おばあちゃんちの食卓には「菓子入れ」があった。蓋付の木工品の中にはルマンド、ばかうけ、多少ベタベタした黒糖飴あたりが揃っていた記憶がある。昔の家庭に菓子入れがあったのは、それだけ来客が多かったからだろうと推測する。玄関チャイムも鳴らさずに農家仲間がやってきては作業の合間のティータイム。青森県南に住む僕の祖父母の家はリンゴ農家を営んでおり、菓子入れを中心としたコミュニティが形成されていたのだろうと想像する。

時代は変わり、菓子入れというプロダクトはめっきりと見かけなくなった。農家の孫である自分もこうして1人で黙々とパソコンに向かっているし、蓋付の木工品の需要は減る一方だろう。しかしアマノジャクな僕はこの菓子入れを現代においても何かに使えないかと模索し、骨董品のお店で見かけては収集している。東北地方の技法で作られた菓子入れには「樺細工」「南部鉄器」などがあり、今回紹介する旧大野村の職人が作る木の器もそのひとつだ。
懐かしく美しい“菓子入れ”の話 ―東北スタンダードマーケット 岩井巽さん
岩手県大野地区(旧:大野村 現:洋野町)は青森県から地続きで「南部地方」と呼ばれるエリアだ。この地域は農林を中心とした生業が盛んなため、冬の間の収入には乏しい。「立ち止まったデザイナー」と呼ばれ、日本の手仕事の継承に貢献した故・秋岡芳夫が初めて大野村を訪ねたのは1970年代のこと。大野村には豊かな森林資源があるのに、冬の間は都会に出稼ぎに出てしまう村の人々を見て、秋岡芳夫は「大野木工」という新たな手仕事を作り上げた。今では洋野町の特産のひとつとなっている。
懐かしく美しい“菓子入れ”の話 ―東北スタンダードマーケット 岩井巽さん
この流れを以前から知っていた僕は、骨董品店で大野木工製のアカマツの菓子入れを見つけた時にはとてもうれしかった記憶がある。それから数年経ち、洋野町でデザインを中心に町を盛り上げる一般社団法人「fumoto」と出会った。fumoto代表の大原圭太郎さんと話す中で、大野木工が生まれてから40年が経ち、木地職人も世代が変わって若い作り手が増えてきたことを知る。fumotoの皆さんと若手の大野木工職人がタッグを組み新しいブランドを立ち上げると言うので、僕はすかさず「ぜひ、菓子入れをお願いします」と懇願した。
懐かしく美しい“菓子入れ”の話 ―東北スタンダードマーケット 岩井巽さん
ブランド名は「ふもとのさともの」に決まり、洋野町のもう一つの特産品である「酪農」をモチーフに、アイスクリームカップのようなフォルムの新シリーズ「酪」が完成した。僕が自分用に買わせていただいたボウルは、鉄分に反応させた天然の黒染めが美しく、食品衛生法をクリアした透明な塗料で仕上げられている。
懐かしく美しい“菓子入れ”の話 ―東北スタンダードマーケット 岩井巽さん
個包装のお菓子だけではなく、丼ぶりとしてご飯もそのまま入れられるのがうれしいが、僕自身はカラフルになりがちな小物を入れるのに重宝している。蛍光色の結束バンド、小学生の頃から使っているメジャーなど、生活の中で目立ってしまうものを入れるのにちょうどいい。「今は」このように使っているが、将来的に中に入れるものを変えていけるのも魅力のひとつ。

そういえば、おばあちゃんちの菓子入れは最近見かけなくなった。譲ってもらえるならば欲しいところだが、僕の菓子入れも、いつか誰かの手に渡るのだろうか。

今回紹介したアイテム

今回ご紹介した「Raku cup」は近日入荷予定!
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