名物店主のお買い物日記 no.161
さあ、何して遊ぶ?漆器の産地で生まれた自由なトレーの話 ―graf 服部滋樹さのカバー画像

さあ、何して遊ぶ?漆器の産地で生まれた自由なトレーの話 ―graf 服部滋樹さん

キナリノモールに集うストアの個性的な店主たちが、自腹を切って買ったものや愛用品をひたすら語る、徒然お買い物リレー。今回は、本連載でも2回目の登場となる、知る人ぞ知るトレーのお話。graf服部さんがその背景についても語ってくれました。

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2024年04月14日作成
服部滋樹
graf代表
服部滋樹
クリエイティブディレクター、デザイナー、京都芸術大学教授を務める。建築、インテリア、プロダクトに関わるデザインや、ブランディングなどを手掛け、リサーチからコンセプトワーク、デザイン、設計、プログラムなど持続可能な形態を生み出す。地域や社会基盤もその領域として捉え、仕組みの再構成と豊かな関係性を生み出すコミュニケーションを物づくりからデザインを行う。
さあ、何して遊ぶ?漆器の産地で生まれた自由なトレーの話 ―graf 服部滋樹さん
さあ、何して遊ぶ?漆器の産地で生まれた自由なトレーの話 ―graf 服部滋樹さん
今回は、福井県鯖江市の河和田地区で生まれたものづくりをご紹介。関西在住なので、河和田には昔から何度も訪れています。眼鏡、そして漆器の産地として有名ですよね(もう何十年も僕のイメージと一体化している愛用眼鏡も、この地でつくられているもの)。
さあ、何して遊ぶ?漆器の産地で生まれた自由なトレーの話 ―graf 服部滋樹さん
河和田の漆器生産技術は、1500年の歴史をもつ越前漆器の進化とともにあります。美しい艶の漆器は、本来約60工程と大変な手間がかかるもの。その工程を減らしつつクオリティーを担保したり、木地*だけでなくプラスティックにウレタン塗料を吹付塗装するなど、時代に合わせて革新的な進化を遂げてきました。

もちろん、昔ながらの木の漆器も使えば使うほどなじんでくる良いものなのですが、今回ご紹介するのはリサイクルABS樹脂を素材とするトレーです。梨地のような不思議なサーフェスに仕上がっていて、前段で話した「革新的な越前の仕上げ」がここに生きています。
*漆を塗る前の土台。越前漆器は素地づくり、塗り、加飾など分業体制でつくられるが、良質な木材を見極め伐採から木地づくりまでをおこなう職人を古くから「木地師」と呼ぶ。轆轤(ろくろ)と呼ばれる特殊工具を使うため、「轆轤師」とも
さあ、何して遊ぶ?漆器の産地で生まれた自由なトレーの話 ―graf 服部滋樹さん
一見「用途不明」だからこそ何にでも使える余白があり、周囲の空間をも良く見せてくれる佇まいなのですよ。

僕は眼鏡や小銭をポケットからジャラッとそのまま放り込むときもありますが、ものの置き方にも気を遣いたくなる器です。端っこに固めてみたり、点在させて眺めてみたり……。「PARK」という名の通り、この器の中は自由に遊ぶ場。子ども達が走り回る公園のごとく、置かれる景色が整います。皆さんも一度、この用途不明の余白の中で遊んでみてください!

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