「茶碗蒸し」と「豚の角煮」を組み合わせる!?
献立案とともに送られてきた料理研究家の冨田さんからのメールには、このような補足が書かれていました。というのも、メニューのリストには「茶碗蒸し」と「豚の角煮」が並んでおり、少し違和感のある組み合わせに思えるからでしょうか。そして、さらに補足は続きます。
「しかし、そんなことはなく。しっかりと具材の入った“お吸い物”だと思えばいいんですよ。」
冨田さんによると、「豚の角煮」のような濃い目の味には、お味噌汁よりも相性が良いとのこと。わたしたちには思いつかないような発想に感心し、是非…と今回の連載で紹介していただくことにしました。
晩秋を迎え、今回用意した「旬」の食材は?
銀杏、チンゲン菜
冨田さんが考えてくれた「本日の献立(おしながき)」
【主菜】豚の角煮
【副菜】素揚げ銀杏
【副菜(汁物)】茶碗蒸し
【主食】白ごはん
秋の夜長にコトコトと。まずはしっかりと角煮の「下ごしらえ」
豚バラ肉を選ぶポイント
脂身が多過ぎず、なるべく赤身とのバランスが良いものを選んで買ってきます。せっかくなので保存用も含めて多めに用意しても良いかも知れませんね。3cm~4cm幅に切ります。
米のとぎ汁で臭みを抑える!
お肉の臭みを抑えて、仕上がりをグッと美味しくする調理のポイント!それは、「米のとぎ汁」で豚肉を茹でること。お米の研ぎ始めに出る、濃いとぎ汁をお鍋いっぱいに用意しましょう。
【30分茹でて、30分蓋をして休ませる】×3セット
角煮を作るうえで最大のポイントとなるのが「豚肉の余分な油をしっかり落とす」ということ。
とぎ汁が鍋の中で対流するくらいの火加減で30分茹でたら火を止め、蓋をして30分蒸らします。この一連の動作を3回続けて行います。
トータルで3時間かかりますが、ずっと茹で続けているわけではないので、思ったほど大変な作業には感じないはず。特にアクをすくい取る必要もないので、のんびり気楽にできそうです。
3回目の蒸らしが終わるとお鍋の中はこのような状態。
鍋に水を差して冷ましたら、お肉をそっと手で持って表面を水で軽く洗い流し、バットなどに取り出して下ごしらえ完了です。前日に行う場合は、そのまま冷蔵庫へ。
銀杏の剥き方も、この機会に習得しよう
必要なのはトンカチとタオル!
専用の殻割グッズも売られていますが、家庭にあるものでも代用可能。タオルを敷き、殻のとがった部分を上にして銀杏を置きます。手を打たないように気をつけながら、トンカチで叩いて割れ目を作ったら、そこから剥いていきます。剥くときに爪を傷めないようにご注意!
薄皮はそのままでOK。転がしながら「素揚げ」
小さめのフライパンに深さ1cm弱になる量の油を注ぎ、160度くらいの中温で2分ほど素揚げしていきます。お箸でコロコロと転がしながら揚げていると、銀杏の薄皮が勝手に剥がれていくように。透明感が出て、色が鮮やかになったものから取り出します。
茶碗蒸し用を除いて、塩だけで味付け
今回の献立では「茶碗蒸し」でも銀杏を使います。なので、その分(茶碗蒸し1個につき2粒ほど)を別にして、残りは塩を振りかけてシンプルに味付け。
絶対真似したい!蕎麦猪口を活用して「茶碗蒸し」作り
食材は定番のものでシンプルに
用意する具材は「しいたけ」「かまぼこ」「三つ葉」と、素揚げした「銀杏」の4種類。〈白ごはん.com〉のレシピでは鶏もも肉も含まれていますが、今回のように肉料理に合わせるときは割愛しても大丈夫。
卵液はザルで漉すことが大切!
しょうゆと塩で調味しただし汁、しっかりと混ぜた溶き卵を合わせたら、一度ざる漉しをすることがポイントです。卵液が滑らかになり、食感良く仕上がります。
お気に入りの蕎麦猪口に流し込んで
切った具材をそれぞれの器に盛り、上から静かに卵液を流し込みます。人気の高まりから、最近ではさまざまな蕎麦猪口が売られているのでお気に入りのものを用意してみては。冨田さんは東屋の染付蕎麦猪口をチョイス。
蒸すときのポイントは?
蒸し器で蒸すときは、始めに蓋をきちんとして強火で1~2分、そのあと蓋を少しずらしてお箸を1本挟んで弱火で20~25分。水滴が落ちないように蓋を布巾で包む工夫も必要ですが、ひとつずつアルミホイルで蓋をすればもっと手軽に。
蒸し器がない場合は電子レンジの機能を利用したり、蓋付きの鍋を使ったりしても作れます。
角煮の仕上げに取り掛かりましょう
30分煮て、一度完全に冷ます
水と醤油、酒、砂糖を合わせた漬け汁に、下茹でした豚肉とスライスした生姜を加え火にかけます。
弱めの中火で30分コトコトと煮たら、火からおろして一度完全に冷まします。冷めるときに味がしみ込むので、もうしばらく我慢して。美味しく仕上がるのを楽しみに待ちましょう。
冷めるのを待つ間に、合わせるチンゲン菜を下ごしらえ
角煮に合わせるチンゲン菜は、根本側が6~8等分になるように包丁で縦に切ります。大きめに切ることで食べ応えアップ。
沸いた鍋に、先に根本側を入れて1分ほど茹で、その後全体を落として茹でると◎。冷水に取って、水気をしぼっておきます。
食べる直前、最後の加熱にさっと落とす
再度加熱した煮汁に、茹でたチンゲン菜をさっと落として合わせるとグリーンもきれいに仕上がります。
いよいよ盛り付け!少しの工夫で華やかに
おもてなしにも喜ばれる♪銀杏は串に刺して
素揚げ銀杏は3個ずつ串に刺して豆皿に。このひと手間でおもてなしのシーンや、お弁当映えもばっちり。
煮汁はたっぷりと。茶たくも用意
角煮は彩り良く盛り付けて煮汁を上からたっぷりと。茶碗蒸しは蕎麦猪口の下に茶たくを敷くと、より丁寧な雰囲気で気分も上がりそう。茶たくの代わりに小皿を使うときは、滑らないようにキッチンペーパーなどを敷くのがおすすめです。
ごはんをよそったら「いただきます!」
意外な組み合わせに思えた茶碗蒸しは、さっぱりとしながらも角煮のしっかりと濃い味に負けることなく、お互いを引き立てているよう。そして、少し小振りなサイズ感の蕎麦猪口で食べると、なんだか可愛らしい!ちなみに、この茶碗蒸しは冨田さんの娘さんも大好きな一品で、一度に2個食べてしまうほどだとか。
味噌汁だと濃いけれど、お吸い物では物足りない…そんなときは、献立に茶碗蒸しを取り入れてみてはいかがでしょうか。
もちろん、お気に入りの蕎麦猪口を用意して。
今回ご紹介したレシピ
豚の角煮
素揚げ銀杏
茶碗蒸し
料理研究家・冨田ただすけ
大学卒業後、食品メーカー勤務や日本料理店での修業を経て2013年に料理研究家として独立。
忙しい現代の家庭環境のなかでも、作り手の心のこもった、素朴で体にしみ込むような家庭料理を大切にしてほしいという思いから、家で作りやすい和食レシピを考案し、届けている。和食レシピサイト「白ごはん.com」運営。近著に『2皿で完結!和のラクうま定食』『冨田ただすけの和定食』などがある。
金色のイチョウ並木とともに、嗅覚でも秋を感じさせてくれる「銀杏」。その実の中にある種は食材としても愛されています。そして、一年中手に入るイメージの「チンゲン菜」も、晩秋が最も味が良くなると言われている旬の食材。