「あの頃」を想い出す行事――ひなまつり
親元を離れて暮らしてからはすっかり機会がなくなってしまい、『ひなまつり』と聞くと懐かしい気持ちになる方も多いのではないでしょうか。
もうすぐ小学5年生になる娘さんがいる冨田家では、ひなまつりは現役の大切な年中行事。今年も、節分を過ぎたあたりに飾り付けを行い準備万端のようです。冨田さんのおうちでは、どんなひなまつりを過ごすのでしょうか?一足早く、教えていただきました。
可憐な見た目も楽しい♪ひなまつりメニュー
【主食】具だくさんの豪華いなり寿司
【汁物】はまぐりのお吸い物
【副菜】にんじんの白和え
親子の絆も深まる、一緒に作るいなり寿司
「あげ」は前日までに用意しておいてもOK
熱が取れたら崩れないように両手で挟んで水気をしっかり絞ります。鍋に広げるときは、なるべく高さが均一になるようにずらしながら並べて。こうすることで、少ない煮汁でも偏りなく味が染みてくれるそうです。
炊くときはだし汁を使っても使わなくてもどちらでも大丈夫。甘めで素朴な仕上がりがお好みならだし汁なしで、上品で風味豊かな味わいが良ければだし汁ありで作ってみてください。(今回はだし汁なしで作っていただきました)
調味料を混ぜたら鍋に注ぎ火にかけ、沸いたら落し蓋をして10~12分炊きます。油あげが煮汁をほとんど吸って、鍋底にうっすら残っている程度になったら火からおろして鍋ごと冷まします。
酢飯と具材の準備
調味料を合わせた寿司酢を、炊いたごはんに混ぜて酢飯を作ります。冨田さんのレシピで作る酢飯は、市販の寿司酢で作るよりも甘さを抑えたさっぱりとした味わい。
野菜類は下茹でをして水気をしっかりとっておきます。いなり寿司に載せやすい大きさにカットもしておきましょう。
「食感、彩り、塩気」を意識してお好みの具材を用意して
用意する具材は大きく分けて3種類。
「①食感のよい青みのある野菜」――菜の花やアスパラ、絹さや、きゅうりなど
「②塩気のある魚介類」――イクラ、鮭、えびなど
「②色味のよい錦糸卵」
この3種を組み合わせられるように準備するのがポイントです。今回冨田さんが用意したのは「ゆでた菜の花、ゆでたアスパラ、ゆでた絹さや、木の芽、きゅうりの塩もみ、イクラの醤油漬け、ゆでたえび、鮭フレーク、錦糸卵」の全9点。すべてを用意する必要はないので、3種類のバランスだけは意識するようにしましょう。
親子で仲良く仕上げをしよう!
あげに寿司飯を詰めるときに、一つひとつ丸めながら行っていると手に米粒がくっつきやすくなってしまいます。なので、先にある程度形を作っておいて、まとめて詰めていくとスムーズです。
具材を載せやすいように、詰め具合は縁にあげが少し残るくらいに留めて。
盛り付けのポイントは、先ほどの3種の具材をバランスよく「奥から手前に」載せていくこと。自然と彩が良くなるので、子どもでも見た目のきれいないなり寿司に仕上げることができます。
画像上が冨田さん、下は娘さんがそれぞれ盛り付けたもの。見分けがつかないくらい、とても上手に盛り付けできていますよね!
良縁を願いながらじっくりと…
はまぐりのお吸い物がひなまつりの定番メニューとなっているのは、2枚の殻が一対になっていて他の殻とは合わない――夫婦円満を象徴するめでたい貝だと言われているからだそう。
だしは使わずに、砂抜きしたハマグリと昆布を鍋に入れて、水の状態からじっくり火にかけていきます。
アクが出てきたら丁寧にすくい取り、沸騰したら昆布は取り出します。貝の口が開いたら、仕上げに風味付けのお酒と、味を見ながら塩を少しずつ加えて。はまぐりのうまみを活かした、とてもシンプルな汁物の完成です。
いつもの食材もひと手間でうれしい一品に
にんじんと木綿豆腐のみで作る白和えは、ひと手間かかる分、そのやさしい美味しさにうれしくなります。にんじんは和えやすい大きさに切って下茹でして冷水に。豆腐を水切りして、いりごま、調味料とともにフードプロセッサーにかけて白和え衣を作ります。
あとは水気を切ったにんじんと白和え衣を和えるだけ。普段あまり白和えを作ることはないかも知れませんが、覚えておきたい和食のひとつではないでしょうか。
家族で楽しむ行事だから――器にまつわる想い出
冨田さんがおばあさまから受け継いだ器。普段はあまり使わないものもあるようですが、年中行事の際には使いたくなるそう。
お重を使ってテーブルコーディネートも豪華に
いなり寿司には重箱がよく似合います。華やかさも引き立ち、ご馳走感も演出してくれます。豆皿を用意して、全体的に和のテーブルコーディネートでまとめましょう。
健やかな成長を祈って「いただきます!」
「ひなまつりに、はまぐりのお吸い物を食べるのはね…」
うんちくにはあまり関心を持たない娘さんに、一生懸命語りかける冨田さん。
そんなあたたかい家族の団欒を、食卓の上でおばあさまの器はやさしく見守るのでした。
食後のおたのしみ♪
冨田家では「子どものお祝い事だから!」と、ケーキも用意して食後のデザートを楽しむことが恒例になっているそう。ひなまつりの行事食でもある「ひなあられ」も、この時期ならではの楽しみですね。
今回ご紹介したレシピ
具だくさんの豪華いなり寿司
はまぐりのお吸い物
にんじんの白和え
料理研究家・冨田ただすけ
大学卒業後、食品メーカー勤務や日本料理店での修業を経て2013年に料理研究家として独立。
忙しい現代の家庭環境のなかでも、作り手の心のこもった、素朴で体にしみ込むような家庭料理を大切にしてほしいという思いから、家で作りやすい和食レシピを考案し、届けている。和食レシピサイト「白ごはん.com」運営。近著に『2皿で完結!和のラクうま定食』『冨田ただすけの和定食』などがある。
【東屋】(いなり寿司)印判小皿/木箸/宮島 6寸半
【Artek】(テーブルクロス)SIENA コットン・コーテッド生地
【TIME & STYLE】(はまぐりのお吸い物)TSUBAKI 端反椀 朱塗
油あげの形は置いたときに安定感のある四角形に切り、切り口から親指をいれて、ゆっくり、やさしく開いていきます。鍋にお湯を沸かし、2~3分さっと茹でて油抜きを行い、水にとって冷まします。