素敵な人に聞いた「おしゃれ」のあれこれ
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素敵な人に聞いた「おしゃれ」のあれこれvol.10-モデル 香菜子さん【前編】

写真:松木宏祐 ヘアメイク:吉川陽子 文:キナリノ編集部

「素敵なあの人は、なんでおしゃれなんだろう?」――この疑問をご本人にぶつけて、おしゃれのあれこれを聞く連載の第10回目。今回はモデル・イラストレーターの香菜子さんにお話を伺いました。 前編では、おしゃれのルーツや定番アイテムなど、香菜子さんのおしゃれの基礎を作ってきたものを紹介しています。自然体のおしゃれが魅力的な香菜子さんの「あれこれ」をどうぞ。

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2019年01月16日作成
【連載】素敵な人に聞いた「おしゃれ」のあれこれvol.10-モデル 香菜子さん【前編】
自然体な普段着の着こなしが支持されている香菜子さん。
モデル、イラストレーターとして、そして2人の子を持つ母として忙しい日々を送っています。
私服の着こなしを紹介したスタイルブックを何冊も出版する香菜子さんのおしゃれは、どのように作られていったのでしょうか。

おしゃれとの出合い

香菜子さんが「おしゃれ」を意識したのは、4歳上のお姉さんが愛読していた雑誌『オリーブ』がきっかけだったそうです
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「姉がオリーブを毎号読んでいて、一緒に見て楽しんでいました。わたしが小学校高学年~中学生の頃でしょうか。“柄の上に柄を合わせていいんだ!”とか、色々なファッションの常識がくつがえったような感覚です。こういうふうにおしゃれを楽しんでいい、と初めて知りました。」

当時憧れのファッション・アイコンは、読んでいた雑誌のモデル。
『mc Sister』で活躍したはなさんや、川原亜矢子さん、そして『オリーブ』に出ていたモデルたち。
姉妹揃って影響を受けていたおかげで、なんとお姉さんにオリーブモデルのように前髪をパッツンに切られたそうです。

「“今この前髪が流行ってるから!ほら、オリーブのモデルさんを見て!”と姉に言われて、“えー!本当に流行ってるの?”と言いつつ切られたのがパッツン人生の始まりです。(笑)」
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切られた当時は驚きましたが、今となっては香菜子さんのトレードマークになっています。
そして、高校1年生のときにはカットモデルとしてオリーブ・デビュー。香菜子さんにとって、縁の深い雑誌だったようです。

めがね

お姉さんと『オリーブ』に刺激を受けて、今でも取り入れているアイテムがあります。

「姉から伊達めがねを教えてもらって、“おしゃれってこういうことなんだ!”と強烈に思いました。ある日、姉からめがねを借りて友達と遊びに行ったら“なんで目が悪くないのにかけているの?変だよ”って言われて。ショックは受けましたが、かわいいからこれでいい、と思うようにしましたね。好きでやっているおしゃれに水を差す人っていやだと思ったし、それに負けない強い心が出来ました。」
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これまでは、伊達めがねをかけていた香菜子さんにとって、初めて度入りを購入したのが写真下のめがね。
細長いフォルムが特徴の、少々個性的な佇まいの“ファーストめがね”でした。

「なんでファーストめがねがそれ、という感じなんですけど。(笑)初めてだからと無難な形を選んでいたら、店員さんに顔の形に似合うのはこちらでしょう、と薦められて買いました。意外としっくり馴染むので、思い込みだけではダメだなと、気付かされた体験です。」

めがねは、何か足りないときに1つ足せるアイテムとして取り入れて楽しんでいるそうです。
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あるテレビ番組も、香菜子さんの洋服好きに影響を与えていたそうです。

「姉と一緒に『ファッション通信』を毎週観ていたので、ファッションデザイナーっていいな、と思っていました。友達と布をデパートに買いに行き、スカートを縫って学校に穿いて行ったこともありました。小6のときには、文化服装学院に行こう、と決めていましたが中卒では入学出来ないんですよね。それで、高校に入ってから美大という選択肢を知り、進学することになりました。」

お姉さんと一緒に見ていた雑誌やテレビ番組が、香菜子さんのおしゃれの基礎を作り、進路にも影響を与えたのですね。

20代までのおしゃれ遍歴

数多くのスタイルブックを出版し、確固たるおしゃれが出来上がっているように見える香菜子さん。
学生のときから今までで、好きな洋服のテイストが変わったことはあったのでしょうか?
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「変わりましたね。若い頃は特に影響されやすかったです。迷子だったというか…。何が似合うのかがわからなくて、とりあえず流行りの服を着ていました。渋谷の109にルーズソックスを買いに行ったり、ラルフローレンが流行れば着たり。」

流行に乗りつつも、ちょっと迷っていた高校時代を経て、美術大学の陶芸科に進学します。

「陶芸科だったので、おしゃれして行っても汚れてしまうから結局つなぎを着るんです。当時からモデルの仕事をしていたので、オーディションがあるときにおしゃれをして行くと、“今日どうしたの!?”と聞かれていました。(笑)服が汚れない、おしゃれなデザイン科の子たちがうらやましかったです。“今日の服いくらだと思う?”って聞いてくる友達がいて、“5000円くらいかな”、と言ったら“10円で買った!”って。(笑)なんでもありな感じでした。」

大学時代に「なんでもあり」な価値観に触れてから、まわりまわって『オリーブ』のようなテイストに戻り、今に至るそうです。

香菜子さんの「抜け感」

ここ数年、がんばっていないのになぜかおしゃれに見える「こなれ感」や「抜け感」というワードを、様々なメディアで目にするようになりました。
もっと前から「抜け感」を取り入れていた香菜子さんは、いつ頃から「抜け感」を意識するようになったのでしょうか?

「いつからだろう?30代?もっと後かな。たくさんの服を買って、全身セレクトショップで揃えていた時期もあったのですが、決めすぎるとおしゃれをがんばっている人みたいでちょっと恥ずかしいと思うようになりました。自分の性格も少し“なんちゃって感”があるので、それが服にも出ているのかな?と思います。あと、高い服ばかりを着ない方が意外とバランスが取れておもしろいと思えるようになりましたね。」
「友人との食事」を想定したコーディネート。ネイビーのニットとスカートの女性らしい組み合わせに、カゴバッグでアクセントを。

「友人との食事」を想定したコーディネート。ネイビーのニットとスカートの女性らしい組み合わせに、カゴバッグでアクセントを。

「靴をスニーカーにしてカジュアルにするのが今の自分にちょうどいいと思うようになりました。カゴバッグをよく使うのも同じような感覚です。当時意識していたわけではないのですが、スタイルブックを作るときに編集者さんに“抜け感ですね”と言語化されてから認識するようになりました。」

季節問わず、「抜け感」を加えるカゴバッグはどのくらい持っているのでしょうか?

「今は5個くらいで、以前よりも大分減らしましたね。穴があいちゃって手放したものもありますが、今残してあるものは使っている長財布が入るかと気分に合うか、を基準に自分にちょうどいいものを選んで残しています。」

買い物について

「常に頭の中に“こんなのあったら欲しいな”というのを置いておいて、出合ったらパっと買うんです。次に行ったときにはもう無いかもしれないので。」
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雑誌の切り抜きを集めるように、なんとなく気になった写真を集めてパソコンのフォルダに保存。ファッションもインテリアも、買い物はそんな風に吟味して決めるそうです。

「お店全体をふわーっと見て、これ!と出合ったものを買います。無いときは一切買わないです。欲しいものが決まっているので、買い物がすごく早いと言われます。」

こうして、実際に思い描いていたとおりのバッグに出合って購入出来たそうです。
買い物で失敗することはないのでしょうか?

「失敗、あります。(笑)去年買ったコートで、最近は丈が長いコートが好きなのに、去年なぜか膝丈のコートを買ってしまって。今年になって、なんでこれを買ったかな…と思ったものはあります。」

大切なのはサイズ感

今までに出版された数々のスタイルブックでは、袖をまくるバランスや重ね着の具合など、細部まで考え抜かれたコーディネートテクニックが披露されています。
香菜子さんが着こなしで大事にされていることはなんなのでしょうか?

「サイズ感がすごく大事だと思います。どのブランドを着るかよりも、その人のサイズに合っているかが似合う・似合わないの基本だと思っているので。だから、自分でしっくりくるまで鏡の前でとことんやってみる、ということはしています。」
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「朝、服を着て、なんかしっくりこないな…と思ったら一回全部脱いで、最初からやり直します。時間があるとき限定なんですけど。しっくりこないまま出かけるということが一番その日の気分に影響すると思うので。ここは徹底的にやります。」

この方法は、スタイルブックを作る過程で出来上がったものでもあるけれど、その過程の中でより強くサイズ感の大事さを実感したと香菜子さんは言います。
誰かにおすすめされたものをそのまま着ても似合わないこともあるし、自分で似合うものを見つける過程こそが大事だそうです。
その自分に似合うサイズ感は、とにかく試着することで見つけていきます。

「気になるものは試着します。ざっくりしたものだったらいいけど、デニムなどは何回もサイズを変えて穿いてみます。サイズ展開がたくさんあるお店だと特に、とことん試着してフィットするものを選ぶようにしています。」

洋服によってはサイズを変えることもあるそうです。

「これだったら自分のサイズはMがジャストだけど、あえてLにしてゆるめに着てみようとか、TシャツならもこれはSを着るけどこっちは袖を折って着たいからLにする、など色々試してみます。」

おしゃれを楽しむコツ

毎日忙しく過ごしている香菜子さんに、おしゃれを楽しむコツを聞いてみました。

「そのとき置かれた状況の中で何がベストか?を考えるのがおもしろいと思います。たとえば、まだ子どもが小さくて公園によく行くならスニーカーとデニムが必需品。その中でどうしたらかわいくなるかを工夫します。」

制限があることを「お題を与えられた」ととらえて、その中で、最大限出来ることを考えるのが楽しいそうです。

「だから、高校のときもすごく楽しかった。制服はセーラー服でスカート丈も校則で決まっていたのですが、洋服のお直し屋さんで違反にならないギリギリの丈でつめてもらっていました。スカート丈は短いのが流行っていたから、学校から出たらウエストを2回巻いて短くして。校則というルールの中で考えるのが楽しかったのです。」
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「本当のおしゃれさんって、制限の中で見つけ出していくものだと思っています。うちの娘が小中高ずっと私服の学校に行っていたんですけど、“なに着てもいいよ”となるとあまり工夫もしなくなるというか。制服だったら、たとえばモッズファッションなら校則違反にならない範囲でどれだけパンツを細く出来るか、とか上着の丈はこのくらい、とか工夫すると思うんです。そういう制限がある方が考えるようになるし、ちょっとゲームに近い感覚で楽しいんですよね。」

制約や制限があるからこそ、おしゃれが生まれる。
こんなふうに考えたら、おしゃれがもっと楽しめるような気がしますね。

(取材・文/金美里)

香菜子(モデル・イラストレーター)

1975年、栃木県足利市生まれ。女子美術大学工芸科陶芸専攻卒業。在学中にモデルを始める。
1998年、出産を機に引退。2005年、第二子出産を機に雑貨ブランド“LOTA PRODUCT(ロタ プロダクト)” を設立。母の立場から「こんなものがほしい」をかたちに雑貨をデザインし人気を集める。2008 年よりイラストレーターとしての活動もスタート。また、モデル業も復帰し、さらなる活躍の場を広げている。モデルのかたわら2018年7月より架空のホテル“VILHELMS (ヴィルヘルムス)”を作り、備品などイメージしたプロダクトの制作を開始。
2015年、コーディネートブック『普段着BOOK』(主婦と生活社)を出版。たちまち重版となり、シリーズともに好評発売中。近著に東京の街を案内する「東京みちくさ案内」(主婦と生活社)
香菜子 (@kanako.lotaproduct) • Instagram photos and videos
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