日本においては曹洞宗などの禅宗を中心に精進料理の技法やレパートリーが広がったと言われています。料理の内容はもちろん、調理工程にも修行の一環として細かな規律が設けられていたそう。

毎日の献立に精進料理を取り入れる際、注意するぺきポイントひとつめは「動物食を避けること」です。動物食とは、お肉やお魚、卵のこと。定番であるこれらの食材は、精進料理では使えません。

2つ目は「五辛あるいは五葷（香味の強い野菜）を避けること」です。具体的には、にんにく、ねぎ、にら、たまねぎ、らっきょうが挙げられることが多いですが、宗派や時代によって解釈が異なります。レシピを確認し、禁止されている野菜があれば置き換えを検討すると良いでしょう。

具沢山なけんちん汁。かつて鎌倉の建長寺で作られていたことからけんちん汁と呼ばれるようになったという説もあるようです。人参の赤、豆腐の白、しいたけの茶など目にも鮮やか。精進料理として作る際には、鰹など動物性のだしを避け昆布だしなどを用います。また、風味付けによく使われるネギや生姜も避けます。

京都では、精進料理を手がける料亭がお寺とともに発展してきました。湯葉やお麩、お漬物など精進料理でおなじみの食材が京都土産として人気なのも頷けますね。最近は家庭で気軽に楽しめる精進料理の鍋セットなども販売されています。ちらは京都・大慈院に店を構える老舗「泉仙（いずせん）」の精進料理の鍋セット。まずはこうしたセットを使って精進料理を味わってみるのもいいですね。

肉や魚を精進料理のルール内で再現した料理は「もどき料理」と呼ばれ、食感や味わいにも工夫が凝らされています。こちらの精進うなぎは豆腐と長いも、海苔などからできていますが、見た目にはうなぎそのものですよね。柔らかい食感で胃腸にも優しそうです。

大豆やひじきを原料に作られたがんもどき“もどき”の精進料理は混ぜて焼くだけで簡単！たっぷりを出汁を含んだ食感豊かながんもどきは煮物の定番ですね。

なすを鴨（しぎ）に見立てたことからその名が付いたとされる、なすの鍋しぎ。ご飯がすすむおかずです。シソの葉を香味として使うことで五辛の使用を避けています。

大豆を加工した肉の代用食品はカロリーを抑えながらタンパク質を得られるため、スーパーでも様々な種類・形状が販売されています。こちらのレシピは茹でた大豆をメインに、ひじきなどと合わせて作った大豆ハンバーグ。和風おろしだれが食欲を誘いますね。精進料理にさらに近づけたいときは、玉ねぎも避けると良いでしょう。

高野豆腐は精進料理でおなじみの具材。高野山で作られていたから、あるいは「凍り豆腐」が転じて高野豆腐となったとも言われています。豆腐を凍らせた後乾燥させて作られるもので、煮物などによく使われます。こちらは唐揚げにすることでお肉のような食感を実現。お子さんにも喜ばれる一品です。

動物系の食材を使わず、野菜をたっぷり加えて作った精進カレー。堅苦しいイメージのある精進料理を、お試し気分で気軽に食べられるメニューにアレンジしています。夏野菜の味わいを存分に堪能してください。

曹洞宗の大本山「總持寺(そうじじ)」では、写経会の後に精進料理をいただく会が催されています。静かに祈りの時間を過ごした後のお料理は心をリラックスさせてくれそう。
参加の際は要予約です。

東京からもお参りしやすい高尾山。こちら大本山の薬王院でも精進料理をいただけます。一見お刺身に見えるもの、鶏肉に見えるものも工夫を凝らして調理された「もどき料理」です。素材に思いを巡らせながらじっくり味わいたい精進料理です。

鎌倉のお寺光明寺さんの精進料理を。静かな境内で色彩豊かな御膳をいただけます。おまんじゅうや水菓子なども合わせ、バラエティ豊かなお品を堪能できます。

臨済宗妙心寺派の総本山である妙心寺の退蔵院にて精進料理を。回遊式庭園余香苑の美しい景色を楽しめる季節限定特別拝観の際にいいただけます。調理は名店「阿じろ」によるもので、京都の特別な思い出になるお食事と言えるでしょう。

隠れ家のようにひっそりと佇む精進料理のお店「皆随寺(かいずいじ)」。予約制のお店となっています。いかもどき、エビもどき、うなぎもどき、茶碗蒸しもどきなど、自分では作るのが難しい本格的なもどき料理が人気です。

法隆寺を訪れる観光客にも人気の精進料理のお店「玄米庵」。いろいろな野菜をたくさん食べられる小鉢のセットが人気メニューです。やさしい味付けとかわいらしい盛り付けにほっこり◎心と体のリフレッシュにぴったりのお店です。