素朴で懐かしいメニューがたくさん登場する物語『深夜食堂』
「営業時間は夜12時から朝7時頃まで。人は『深夜食堂』って言ってるよ。
客が来るかって? それが結構来るんだよ。」
客が来るかって? それが結構来るんだよ。」
出典:www.flickr.com(@Stephen Kelly)
出典:www.flickr.com(@Urawa Zero)
こじんまりとした年季の入った店内に、表メニューは
豚汁定食・ビール・酒・焼酎
たったのコレだけ。
けれど、ここにやって来るお客さんは知っています。他にも、たくさんの"裏メニュー"があることを。
唯一の表メニュー「豚汁定食」
食堂唯一の食事メニュー「豚汁定食」。深夜食堂のオープニングは、毎回、香ばしい豚肉の香りが画面の中から漂ってきそうな、そんなシーンから始まります。よく熱した大鍋に、ジュワーっと豚バラ肉を炒め、そこにどっさり野菜とだし汁を注ぎ込み、大きなお玉ですくったお味噌を溶かす。画面に「美味しそう♪」が広がる瞬間です。
具だくさん豚汁
ここからは『深夜食堂』に登場した、“メニューにはない”料理の数々を各エピソードを交えながらご紹介したいと思います。
第6話「カツ丼」
勝利を祈願し食べる「カツ丼」。けれど、そのボクサーは試合に勝った日にだけ、深夜食堂にマスターのカツ丼を食べにやってきます。タイトルマッチがかかった人生初の大勝負の夜。ボクサーは、深夜食堂に現れたのでしょうか?
サクッと揚がったカツにとろとろの卵のゴールデンコンビがたまらないレシピです
第13話「あさりの酒蒸し」
第16話「クリームシチュー」
市販のルーを使わなくても、意外に簡単にクリームシチューは作れます。コツは、バターを焦がさず、小麦粉をダマにないこと。弱火でゆっくりバターを溶かし、小麦粉も少しずつ混ぜながら加えていきます。ペースト状に混ざれば上出来。牛乳も「慌てずゆっくり」が、ダマを作らない方法。
第17話「白菜漬け」
人気シナリオライターである彼女の好物は『白菜漬け』。独身の彼女は深夜食堂に立ち寄っては、それを食べ、愛猫の待つマンションへと帰っていきます。そんなある日の帰り道、たまたま乗り合わせたタクシーの運転手に深夜食堂の白菜漬けをお裾分けした彼女。白菜漬けが繋いだ縁が、彼女の心と、その愛猫を救います。
第19話「肉じゃが」
灰汁を丁寧にすくい取るのも、野菜旨みを活かすコツ。千切りにした生姜を加えると、味にアクセントがつきます。
第20話「餃子」
深夜食堂の中で、ただ一つ、マスターが専門店から出前を取って客の注文に応えるものがあります。それが餃子。どうしてか?って、「俺が作るより美味い」から、なのです。
そして、全ての材料を合わせ、しっかり揉む。材料に、干しシイタケや干しエビを混ぜると、味の深みがグッと増します。
第21話「メンチカツ」
シナリオライターや有名料理評論家。著名人と呼ばれる人間も、何を気取ることなく立ち寄る深夜食堂。その夜は、夫を亡くし歌を忘れてしまった歌手が、久しぶりに姿を見せました。夫の好物だったメンチカツを食べ、店の常連客のパートナーのために、忘れた歌を思い出すことは出来るのでしょうか?
第23話「里芋とイカの煮物」
丁寧に剥き、つるんと面取りされた里芋。下茹でしたイカ。じっくりと煮含められたそれらをもう一度火にかけ、客の鼻をくすぐるマスターの作戦は、大成功。理由は分からないけどなんだか相性が良い里芋とイカのように、〈深夜食堂〉では複雑な男女関係の人間ドラマが繰り広げられます。
第24話「紅しょうがの天ぷら」
深夜食堂の店内に、珍しく大阪弁の速いテンポのやり取りが響いています。一人は若い女性。一人は年配の男性。やり込められているのは、男性の方。難波娘の女性が頼んだのは持参した紅生姜の「天ぷら」。マスターもその男性も知らない料理でしたが、彼女にとっては思い出が詰まった大切な味でした。
第25話「春雨サラダ」
嫌いだと思っていたものも、好きな人の好きなものだったら食べられる。そんな経験はありませんか?子どもの頃からの想いが詰まった思い出の味に、つい涙してしまう…そんな女性も〈深夜食堂〉には訪れます。春雨サラダの思い出と初恋は、春雷と共に遠ざかっていきました。
第26話「ロールキャベツ」
ロールキャベツの一番の難しさは、"崩れないように煮ること"です。煮崩れないためには、鍋の中で踊らないように隙間なくならべること。そして、途中で触らないことです。
第28話「きんぴらごぼう」
肩で風を切って歩いていた若頭が、途端にガキ大将に戻る瞬間。それは、恩師であり、初恋の人に再会した時。マスターから出された"千切りのきんぴらごぼう"に喜ぶ女性に、それまで息巻いていた常連の若頭顔が、少年へと戻ります。運命かと思われた再会は、1通のエアメールが終止符を打ちました。
第30話「年越しそば」
大晦日。「やることなくって」といつもの顔が集うのは、深夜食堂。しかも、各々が持ち込んだ"そば"で、年越しそばを注文するのです。マスターが、早くから準備した手打ちそばがあるのに。
年越しそばの定番は、やっぱり「えび天」
北海道や京都では「にしんそば」
除夜の鐘が聞こえ始める頃には、深夜食堂は満席です。やはり、マスターの手打ちそばが食べたくて。
みんなで年を越すことができる幸せを噛みしめながら、新しい年が始まります。
みんなで年を越すことができる幸せを噛みしめながら、新しい年が始まります。
おわりに
出典:www.flickr.com(@Fabian Reus)
『深夜食堂』に出てくるお料理はどれも素朴で、懐かしい気持ちにさせてくれるものばかり。誰もがもっている「思い出の味」を丁寧に作ってくれるマスター。
角を曲がり路地へ入れば、この街にも『深夜食堂』がみつかるかもしれません。
……という、小林薫さん演じる"マスター"の語りから始まる『深夜食堂』。言葉の通り、店の名前は「めしや」。"深夜食堂"とは、通称なんです。
そして、深夜0時。そんな開店時間にもかかわらず、毎日見る顔、初めての顔、どこかの路地を入ったところにある"深夜食堂"に、今日も客は結構、訪れます。