母は、いつでも生活を滞らせずに回している人。やると決めたことは続けることができる胆力と、問題にぶつかっても動じない心と体の強さがある人。手先が器用で職人のようなところがある人。真面目であたたかく、気の知れた友達のような人。ふだんはなかなか感謝の言葉を伝える機会がないけれど、とてもありがたく、いつでも私の中で大きな存在です。

大学生になり、初めてのアルバイト代で母に麻の帽子を買いました。そこまで高価なものでもなかったのですが、都内の帽子店に足を伸ばし、似合いそうなものを選んだことを覚えています。当時は「プレゼントなんて用意しなくていいのに」と少し申し訳なさそうに受け取った母。それから数年後の帰省の際、母の化粧台の横にマスキングテープで留めてある、その帽子店のショップカードを発見しました。

母が気に入って使ってくれている様子は見ていたのですが、ショップカードまで大事にしてくれていると知り、心が温かくなると同時に、その健気さに少し心が痛みました。今でも何かを渡すたび、「プレゼントなんて気を使わなくていいから」と言いますが、帰省の都度、化粧台の横や冷蔵庫に、見覚えのあるショップカードのコレクションが増えていることを私は知っています。

お母さんは「私はあまり苦労をしてこなかった」と話すけれど、側で見ていた私としては、どんな壁でもハードル走のようにひょいっと飛び越えてしまう、器の大きさと心の脚力をあなたが持っているからだと感じています。私がたまに突拍子もない選択をしても、「いいんじゃない」と友達のように笑ってくれてありがとう。「あなたの選んだ道を応援しているから」と言ってくれるけど、私もお母さんが自分の道を生きて、これからも幸せに過ごしてくれることを願っています。

介護や仕事と大変なこともたくさんあるけれど、あまり無理はしすぎずに、自分のことを大切にしてね。私もお母さんがなるべく自由な道を選んでいけるよう、それを支えられるような大人に、これからなりたいと思っています。なるべくまめに家にも帰るようにするね。これからもよろしくね。